ニュージーランド映画「Once Were Warriors(「ワンス・ウォリアーズ」)」1994

「Once Were Warriors(「ワンス・ウォリアーズ」)」Lee Tamahori 、ニュージーランド、1994

 ニュージーランドは、世界でもっとも過ごしやすい、魅力のあるくにのひとつである。
 マオリ族という原住民がいるが、たとえば米国保留区のアメリカインディアンにくらべれば、はるかにアイデンティティをまもり、主体的にいきているように思える。
 だが、それもひと皮むいてみればどうなることか。

 けっして声高ではないが、白人中心社会にくらべると、名目だけは豊かな暮らしを享受できるはずのマオリ族にも問題はたまっているらしい。
 さらに若者にかぎってみれば、グローバル化の諸問題が台頭してくる以前のことと思えるのに、世界のどこにでもある青少年のデスオリエンテーションの問題が如実である。

 さらに、この作品の核心は、貧困(雇用)、アルコール、ドメスティックヴァイオレンスなどから成り立っている。
 かつての部族社会が、核家族化することによって閉塞感がうっ積し、家庭が修羅場へと直結する。
 その痛々しい限界状況は、それこそギリシャ悲劇を思い起こさせるような次元。
 あるいは、そこでのおんなの目覚めを謳っているとしたならば、これはフェミニズム映画であるにちがいない。

 マオリ文化もいまだに根付いているところがある。
 それは自覚なしでは守りきれるものではないし、カウンターカルチャーとして苛まれ続けなくてはならないような仕組みになっているらしい。

 おとこの側の獣性は、中上健次の語りを思い起こさせる。

 この監督、大島渚の「戦場のメリークリスマス」では助監督をつとめていたのだとか。。。助監督なんてなにしてるひとか知れないけど。


(2008/05/20)