2010-01-01から1年間の記事一覧
スペイン内戦についてはニホン人もわりと関心を抱いた。 フランコ勢力に対抗し、人民戦線政府が政治を死守しようとしたが挫折し、人民戦線の構成員はフランスへ亡命、しかしフランスもドイツの手に落ち、フランスに滞在する左翼系スペイン人やユダヤ人はアウ…
海洋モノは歴史的にフランスがつよいのか。 いろいろな水中、水上の生きものが丁寧に、視覚的に、しかも迫力をもって描かれる。 じつはこういった生きものは注意していれば頻繁にTVでも見つめることができるので、それほど驚くようなシーンがあるわけでは…
高校生と大学生のダニエルとアナの姉弟は仲がよくてインセストっぽいほど。 家庭は富裕で、貧乏人がますます貧乏に、金持ちがますます金持ちに、という最近のメキシコを表現している。 アナは結婚とひかえ、あたらしい人生へと旅立とうとしている。 そんなさ…
ヴィエトナム戦争当時から、米軍には特殊部隊が存在し、特殊能力が研究・開発されていたという。 タイトルのとおり、山羊をにらみ続けるだけで殺したり、壁を通り抜けたり、そういったことはアポリネールだとか、奇特なアーティストたちによっては抱かれてい…
オアハカに家族を残し、アンドレスは米国へ働きに行くつもりでティフアナ(ティワナ)までたどりつく。 しかし塀を越え、砂漠を横切る試みは米国のボーダーパトロールにより、ことごとく挫折。 転がり込むようにしてたどりついたティフアナの雑貨店にて仕事…
モンティ・パイソンのテリー・ギリアムによる作品で大いに期待ができるものの、ポスターを観ただけでちょっとげんなりするところがあり、実際、そのとおりであった。 もっとも初めから、わたしはストーリーに入っていくのが容易ではなく、立ち遅れてしまった…
パリの富裕な家のひとり娘は、すべての愛を神にささげ、すべての人間関係をうつろなものとみなす。 そんなときにイスラム系の兄弟と知り合い、弟は恋愛を望むが、兄はイスラムへの親和を欲し、神の概念の至上性を媒介にしてこの娘セリーヌは深入りしていく。…
往年のアイドル、ソフィーマルソーが母親役。 パリの高校生は、勉強もせず誘惑に身をまかせ、そんななかでもいろいろ悩んで生きる。 それは古今東西おなじこと、ただ程度に問題があるということで、わたしたちだってむかしはばかなことばかりしていたのだ(敢…
前作、スーパーサイズミーにより、マクドナルドをおちょくった監督による第二作。 今回はビンラディンを探すべく、中東を行脚するという構成。 マイケルモーアの好敵手とも目されるこのスパーロックは、今回は奥さんが出産を控え、子どもたちをむかえる未来…
オゾン監督の最新作。 小学生の娘と暮らす母親は、製薬工場に勤める。 職場でおとこを知り、仲良くなり、娘は複雑な心境であったが、三人で住みだす。 このおとこはスペイン人。 赤ん坊がうまれる、しかし母親は赤ん坊の背中に痣らしきものが出来ていて、乳…
ひとを教える、ひとを導くことはむずかしい。 だれに、なにを教えるのか。 かつてはロビンウイリアムズ主演の"いまを生きる(Dead Poets Society)"(1989)が、喝采をあびた。 しかしこれは米国のエリート、あるいは将来のエスタブリッシュメントを対象にした教…
カントリー音楽はすべて保守的だなどと決めつけるのは、あまりにもステレオパターンかもしれない。 カントリー音楽というと、どうしてもジョージブッシュの顔を思い浮かべてしまうのだが。 いささか過去の栄光にひかれるようにしながらも、どうにかこうにか…
60年代初頭のイギリスはロンドンの中流家庭の一人娘ジェニーは高校生。 フランス文化、とくにジュリエット グレコあたりの唄に心酔。 女子高で、仲間とタバコをふかしながら、勉学にもはげみ、ラテン語などがつよい。 オックスフォード大をめざす。 しかし突…
米国がいったいイラクでなにをしていたか、そろそろ映画界でも出てきてよさそうなころである。 しかし米軍爆弾処理班をとおしてみたイラクは、多方の米軍がやはり感じているように、危険極まりないところでしかない。 しかもそこになぜ送られなくてはならな…
ジンギスカンを描いた歴史ロマン、こういった歴史物はあまり好みではないのだけれど、メキシコにてようやく公開、二ホンではずっとまえに公開されているらしい。 ジンギスカンといっても、その幼少、思春期、青年期のはじめが描かれているだけで物足りなく感…
1960年代の米国にて、ユダヤ人家族の自嘲的、しかしコンプレックスが見え隠れする作品。 コーエン兄弟の作品としては、米国での小市民的ユダヤ人のメンタリティにずいぶんと触れた内容。 日常のこまごまとしたことが丹念に記されていて、うんざりしてきそう…
ちょうど80年代のペルーではセンデロルミノソというゲリラグループと政府との争いがはげしく、おおくの市民、ひとびとが犠牲になる。 主人公の女の子ファウスタは二十歳前後、しかしその母親がそのあおりをうけ、レイプの犠牲者に。 授乳をつうじて母親の哀…
原作は干刈あがた、このひとの作品はリアルタイムで読んでいた。 雑誌「海燕」第一回の新人賞。 いろいろといわくの多いひとらしく、リコン家庭というのが、まだ好奇のまなざしを差し向けられていたころの話。 単身赴任の夫とその家族の拮抗、夫には愛人がで…
まずは猟奇性、ついで子どもの世界の野蛮さ、出だしはあまり気が乗らない、というか不快。 しかしこれがスエーデン都市社会のヴァンパイア神話のヴァリエーションだとわかってくると、さあ、お手並み拝見ということになる。 主人公のブロンドのマージナルな…
ヤラレタ、とひと言だけでやめておこうと思った。 見終わってからメトロの駅までため息とも深呼吸ともつかぬ息遣いとともに歩く。 そして見終わってから半日たち、これはことばにはできない、などと怠惰の自己肯定をしてはいけないという気になる。 このあい…
サム・メンデスというこの監督は、前作がデカプリも出演したRevolutionary road。タッチが似ている。 子どもが生まれることになった若いとは必ずしもいえない若者夫婦、ただし籍はいれないらしい。 いまの森のなかを離れ、三人で暮らすのにベストな場所を求…
メキシコきっての人気俳優ガーエル・ガルシアとディエゴ・ルナの共演ということで、魅力たっぷり。 メキシコのいなかで働く兄弟のひとり(ガーエル)がプロのサッカーにスカウトされ、弟も無理やり首都デビュー。 兄のガーエルは、一躍有力選手になり歌手業…
アルモドバル監督の新作、ペネロペ・クルスの魅力満載。 時間が前後し、プロットは入り組む。 富豪実業家の秘書が、女優業にすすみ、実業家、映画監督のあいだの確執やらその周囲の人物の遣り取りですすむ。 じつにしっとりと、しかしサスペンス調にときが流…
米国映画ではあるが、よくあるハリウッド映画とはひと味、ちがうようだ。 トムという青年とサマーという女の子が仕事先で知り合い、付き合いだす。 しかしトムはあまり美男ではないし、どこかピントがはずれていて、サマーもあまりリアルではない。 その意味…
ひとは仕事をもとめて南から北へと流れる。 現代の世界では労働人口の移動(合法・不法)が問題の焦点のひとつであり、メキシコを例にとれば、メキシコから米国への密入国者たちがテーマになる。 それはいまではずいぶんとその労苦を中心に語られている。 し…
戦後まもなくのフランスにてフランス料理をおさめたジュリア(メリル・ストリープ)と、ニューヨークにて、やや浮いてしまった若い女ジュリーのフランス料理修行が、対位法的に並べてある。 ジュリアのパートは、古き良きパリにて、ことばに苦労しながら学ん…
オドレイ・トトゥがシャネルを演じるというので評判になっている。 ポスターはよく撮れているが、ここでのオドレイ・トトゥは、どちらかというと藤田弓子のように見えてしまう。 ココは唄が好きな、どこにでもいるようなお針子娘、このお針子娘というのは、…
戦間期のパリのミュージック・シアターでのひと騒ぎ。 その興亡というと堅苦しく響くかもしれないが、社会情勢やら人間悲喜劇をからめている。 もちろんふんだんにシャンソンが唄われる。 こういったショービジネスがキライではないが、今回は、大筋はつかめ…
精神的に異常をきたしてしまっている黒人チェロ(ヴァイオリン)奏者と、白人ジャーナリストとの絡み合い。 米国のアフリカ系黒人がなぜクラシック音楽を?などと問うてはいけない。「バグダッド・カフェのあの男の子も紙の鍵盤でバッハを弾いていたではない…
ニホンにおいても明治新政府になり、学制発布ということで義務教育が開始されると、労働力を奪われるとみなした親たちは反対したのだという。 メキシコにおいては、とりわけ地方においては仕事の現場に投げ出されている子どもがうじゃうじゃいるらしい。 し…