2013-01-01から1年間の記事一覧
「ゼロ・グラビティ」アルフォンソ・キュアロン、2013、米国 宇宙遊泳なるものが危険であることは、初めて試みた旧ソ連のレオーノフ飛行士のときからみながじゅうぶんに認識していたはず。それが近年は宇宙ゴミなるものが襲ってくるものだからさらに危険…
O Gebo e a Sombra(ゲボとその影)、Manoel de Oliveira, 2012, Portugal & France, 104歳という驚異的な年齢でもって監督の仕事をこなしていくポルトガルの巨匠。 まったく地味な作品でもちろん低予算ではあるが、フランス資本に頼らなくてはならなかった…
“Mud(マッド)”, Jeff Nichols, 2012, US 米国南部のミシシッピー河沿いといえばそれだけでその雰囲気に呑まれてしまう。 ふたりの10歳前後の少年が孤高を保つ、どうやら逃亡人らしい若い男とかかわる。 わたしが注目してしまったのは、この男が木の上に引…
“Fecha de caducidad(有効期限)”、Kenya Márquez、2011、Mexico. 亡くなった息子を捜しに身元不明死体収容所を訪れる母親の話から始まるがストーリーは錯綜し、その構成も工夫されている。不気味さに占められ、あまりいい趣味には思えないグロさ…
“Cesare deve morire” 塀の中のジュリアス・シーザー 、Paolo Taviani, Vittorio Taviani、2012, Italia. イタリアの監獄にて重罪囚人たちがすぐれた指導の下でシェークスピアのシーザーを演じようと訓練する。しだいに熱が入ってきて公演は輝かしい…
"Les saveurs du Palais"(大統領の料理人), Christian Vincent, 2012, France シェフについてのフランス映画ならば以前におなじく「シェフ! 〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜」の印象が残っていてそこではジャン・レノがシェフをつとめていた。 この…
[] 『ルノワール 陽だまりの裸婦』(Renoir)ジル・ブルドス, 2012.フランス ルノワールは昔からニホンでも広く愛されてきた画家である。夢のような、柔らかいトーンはだれにでも好まれる。しかしルノワールの第一次大戦の空気を吸ったのであり、フランスの…
『トゥ・ザ・ワンダー』、テレンス・マリック、2012年、米国 男と女とのどこにでもあるような恋愛譚で、情熱があれば失望もあるといった具合。映像はたとえようもなく美しく、まるで観光プロモーションのごとくで、それだけで圧倒されてしまってもおかし…
“Miradas multiples”, Emilio Maillé, 2012, Mexico いまでこそメキシコの映画は世界的に注目されているが、かつてはメキシコの古き良き時代を一心に映し出している伝説的な撮影監督ガブリエル・フィゲロアなる人物が存在した。 メキシコ映画の黄金期ともい…
「ハンナ・アーレント」、マルガレーテ・フォン・トロッタ、2012、ドイツ 高名なドイツの思想家ハンナ・アーレントの伝記映画のような体裁を持つ。わたしにとってはその詳細を知らぬ思想家だったので、学ぶことが多く、その知性と感情生活とが同時に描か…
高校生だったころはあまり映画館へ通うことがなかった。 そんなごくわずかな映画作品のなかでとりわけ印象深かったのは、リチャード・セラフィアン監督の「バニシング・ポイント」という作品。 いわゆるロード・ムービーで走行中に官憲に眼をつけられ、大捕…
“Cesare deve morire” 塀の中のジュリアス・シーザー 、Paolo Taviani, Vittorio Taviani、2012, Italia. イタリアの監獄にて重罪囚人たちがすぐれた指導の下でシェークスピアのシーザーを演じようと訓練する。しだいに熱が入ってきて公演は輝かしい…
“Ginger & Rosa”, Sally Potter, England, 2012 二人の女の子はずっと仲良く育ち、その叙情的な映像の連続にはため息をつかされる。時代は戦後の、核戦争の恐怖が叫ばれていたころで、とくにジンジャーが平和運動にのめりこむ。この二人の女の子が強く結ばれ…
“Las buenas hierbas(グッドハーブ)“、Maria Novaro, 2010, Mexico 植物学者である母ララに娘のデリア、シングルマザーでコミュニティラジオで仕事のようなものをしている。それに幼い息子のコスモ。母と娘は独立しつつ生きて、しっかり威厳を守っていたが、…
“The Door”, István Szabó, 2012, Hungary イシュトヴァーン・サボーは、ハンガリーが誇る映画監督であり、印象的な大作を発表してきた。しかしここ数年、その名を聞くことがなかった。6年ぶりの作品である。じつは6年とちょっと前に体制のインフォーマン…
“7 Days in Habana(ハバナの七日間)“、Julio Médem, Laurent Cantet, Juan Carlos Tabío, Benicio del Toro, Gaspar Noé, Pablo Trapero、Spain, France, 2012 スペイン語圏でも著名な七人の監督による、ひとつのストーリーを基にした共作であるが、それは自…
“Stand Up Guys”, Fisher Stevens, 2013, U.S. ひさしぶりのアル・パチーノ。しかし長い間の監獄暮らしの姿はなんともくたびれた感じで、すべての感興はそこで色あせたという感じ。ギャングとその復讐譚であり、味付けもやや古臭いがどうにも冴えたところが…
Le Hérisson(はりねずみ)“、Mona Achache、France,2009 パロマという思春期のパリの女の子はお金持ちの家庭で、なにも不自由することもないのに自殺することしか考えていない。そしてビデオカメラを回すのも趣味でまわりのあれこれを撮影する。住まう建物の…
“Cosmopolis『コズモポリス』”, David Cronenberg, France/Canada, 2012 米国の億万長者が夜のマンハッタンを豪勢な車で運転手とまわりながら、いくつかの出来事に遭遇。もちろん、億万長者にも予定があり、それを達成するべき動くが、偶然に出会ったひとた…
« Des vents contraires », Olivier Adam, 2009, France パリに住んでいた大学の先生である奥さんと物書きの夫、それに二人の小さい子どもは、とつぜん、奥さんの失踪という事態をむかえる。 しかたなく生まれ故郷の海の近くの町で自動車教習講師で暮らすこ…
“La Playa DC(DC海岸)”, Juan Andrés Arango, 2012, Colombia メキシコにかぎらずコロンビアなどラテンアメリカ、より多くのひとびとが不況と失業などに悩む。とりわけ若いひとたちは仕事もなく、いかに生きていくのか四苦八苦。ボゴタ市のマージナルな地域…
“La vida sin memoria parece dulce...(記憶のない暮らしは甘そうだ)“, Iván Ávila Dueñas, 2013, Mexico 1930年代からメキシコのサカテカス州にて撮影された8ミリカメラなどの映像資料をもとに、当時の暮らしを再現すべき構成されたドキュメンタリー。…
“KLIPS”, Maja Milos, 2012, Serbia ユーゴスラビア解体後のセルビアやらボスニア、あるいはコソボなどの紛争はよく知られているものの、では実際、どのようなことがどんな展開をもって終始したのかと問われると、よほど関心を抱いているひとたちを除けば答…
“On the road(路上)”, Walter Salles, 2012, Brazil, France ビート世代ジャック・ケルアックの代表作、その映画化はながいこと挫折してきたが、コッポラの製作の下、あのブラジルの監督によって達成される。メキシコの古き良き時代のシーンをはじめ、あり…
“Faust”, Alexander Sokurov,2011, Russia この監督の作品を見るのは初めてだし、古典中の古典。意気込んで見る。原作も邦訳で読んだことがあるが、あまりよくわからず、ドイツ語の専門家に訊いたら、注釈書がないとあまりわからないものだとか言う。とにか…
“Abolicion de la propiedad(資産の廃棄)“、Jesús Magaña、2012、Mexico 原作は、メキシコのニューウエーブと呼ばれる世代の代表者による作品、いかにものタイトルで興味津津。しかしその内容は、家庭での若いカップルによる対話で、シンプルかつ…
“Post Tenebras Lux(闇のあとの光)“、Carlos Reygadas、2012、Mexico いまや若くしてメキシコを代表する監督としておさまったひとによる作品。都会を離れていなかに移り住んだ若い家族が、とりわけ二人の子どもの生き生きした表情を追いつつ、友人や近所…
“Holy Motors(ホーリーモーターズ)”、Leos Carax、2012、France この作品ではパリの夜を、さまざまな人物を通して描こうと試みるが、その人物たちとは夢のなかの世界のようにおぼろげでなによりもカオスにみちていて、そのイマジネーションへの解…
“Love Is All You Need”, Susanne Bier, 2012, Denmark 結婚式をあげるばかりだった若いカップルが、自分たちに偽りを見出し、突然、結婚を破棄し、周囲を混乱に陥れる。一方、デンマークからイタリアの会場に移ってきた新郎の父親と新婦の母親が恋に陥り、…
“Memoria de mis putas tristes(わが悲しき娼婦たちの思い出)、Henning Carlsen、2011、Mexico 事実上のガルシア=マルケスの最後の小説の映画化。しかし老いた文化人が幼い女の子に恋をし、交わってしまうという話は現在のメキシコにはあまりにも…