2011-01-01から1年間の記事一覧
El ultimo tren(The last train)(最後の列車)”, Diego Arsuaga, 2002, Uruguay, Argentin. アルゼンチンやウルグアイは広大なパンパをかかえているだけあって、鉄道交通の発達が著しく、蒸気機関車も歴史を持つ。その古い蒸気機関車が米国のハリウッドへの売…
逮捕された犯人を引き連れ、深夜の平原を三台の車が被害者の埋められた死体をもとめて右往左往する。それでもようやくのこと死体を発見でき、市に戻り、取り調べが本格化するのだが、犯人と犠牲者とのあいだがもうひとつはっきりしない。犠牲者の妻子も現れ…
なぜかドアーズというグループは神話的なバンドだという印象がつよかった。コッポラによる「地獄の黙示録」にて「The End」という曲が終わりに使われて、ドアーズへの興味がいやがうえにも強まったとき、オリヴァー・ストーンがこんどはそのものずばり「…
“Todos hemos pecado(我らは罪人なり)”, Alejandro Ramirez, 2010, Mexico. メキシコの地方の荒涼とした風景に村の人々が織りなす閉鎖性のなかで、死神とされる女はひとを導き、天へ地の下へと導く。そんな狭隘な風土のなかで死の苦しみを味わいながら、…
Himizu”, 園子音, 2011, Japan。 親に見放された中学生の男の子、親を憎むことしかできない環境の男の子はとうとう貸しボート屋稼業にてひとりで生きていこうと決心。おなじく親から見放された女生徒が付き添い、邪険にされながらも男の子を支えていこう…
フランス自身がフランス在住のユダヤ人を強制収容所に送ったというのはフランス史の汚点らしい。そんな収容所から奇跡的に生き延びたユダヤ人少女はようやく元のアパートに戻るが、隠しておいた弟は死亡。そんな後ろめたさを負ってこの少女は戦後を生き…
パキスタンの難民キャンプで暮らすアフガニスタン人の少年と青年という従兄弟が豊かな将来を目指してはるばるイギリスまで陸路で旅をするという話。 しかしいくつもの国境を渡らなければならないし、いのちの危険はあるし、お金の心配はあるし、これほど苦渋…
例によってあらすじなどおかまいなく見たものだから、ケヴィン・コスナーの「ボディガード」のコミカルなパロディかと思っていた。 すると男二人に女一人のこのチームは、カップルを別れさせる仕事を請け負っているのだとわかってきた。 依頼主は若い女の父…
イタリアにおいて、いわゆる活動的なファシストの内面にはどんなものが巣食っているのかを解き明かそうとした作品。 原作はアルベルト・モラビアの「孤独な青年」で、子どものころのトラウマからひとがなぜ歪んでいってしまうのかを叙述する。 ジャン・ルイ…
祖母、母、娘の三代にわたってそれぞれの夫を溺死させるという、いってみれば怪奇事件ではあるが、冒頭からさまざまなゲームが飛び出してきてリアルさが宙に浮いている。 これはべつにリアルさが欠けているというわけではなく、数のゲームなど、どこか別の世…
映画館にて観ているあいだ、ずいぶん壮大で優美な作品だと感銘を受けた。 ところが数日してみると、それほど鮮明な印象に恵まれていないことに気がつき、自分に判然としなかった。 米国の厳しい躾けの家庭が描かれ、しかし事故によって家庭の幸せが崩される…
イギリスはとくに都市部を中心にすさんだ雰囲気が街にみち、それは家庭内でも家族の価値観に支障をきたしている。 若者は働かず、サッカーなどに浮かれ、ショービニズムが蔓延。 そんななか、移民がしだいに増えつつあり、それも社会不安をあおっているが、…
冒頭、サボテンの原の道にて二人の農夫が一人の農夫を殴り殺す。 まるで動機なしの殺人のようで一気に謎へと引きずりこまれる。 しかしこの二人は殺した相手を丁重に扱い、どうやら顔見知りないし仲間らしいことに気がつく。 この村はメキシコでは珍しいこと…
メキシコシティのつぎにメキシコ人の人口が多いとされるロサンジェルス、その米国においてのメキシコ人をはじめとする不法就労者の話はいままでずいぶん、映画にも撮られてきた。 米国社会は不法労働者を搾取することなしには成り立たないのにもかかわらず、…
メキシコ映画としてはめずらしく未来をあつかうが、いまさらユートピア世界にはなりそうもなく、開高説くところのデトピア物。 つまり将来のさらなる人口過剰のゆえに、人は昼間に活動するひとたちと夜に活動するひとたちとに国家によって二分される。 しか…
ジャンはハイチから隣国のドミニカ共和国へと渡り、仕事を捜すがすべて無駄足に終わる。英語、仏語、西語などに堪能、かつ会計士でもあるが、不景気のためもあって、建築あるいは土木作業員とかしかない。しかし不平を口にすることはなく、祈りと神との対話…
フランスにて裕福な医師の妻が、ふたたび整形医として自宅で開業しようとしたとき、スペイン人の作業員と恋に陥ってしまう。 スザンヌは思春期の娘と息子がいながら、家庭というものに窒息感を抱いていた。 ここで窒息感を感じることが正当であるかもまず問…
米国の物質文明を唾棄するクリスは大学卒業を機に、自然へと一人旅に出る。 自然のなかになにかを捜すというよりも、自然のなかの自分を確かめたかったのではないかと思う。 しかしそのプロセスにてやはり自然に惹かれた、というか自然に生きているひとたち…
妻を亡くしたあとの男、つまりオリバーの父親はゲイになり、宣言する。 それからはゲイ仲間との交流もおおくなり、年若き恋人もできる。 そんな父親をやきもきして見守るオリバーであるが、父親は末期がんに陥り、自宅にてゲイ仲間に見守られながら亡くなる…
かつて南アメリカはアパルトヘイトの国として世界から唾棄されていたが、牢獄から復帰したネルソン・マンデラが大統領に就いてから、すっかり一変し、活気のある国と変貌。マンデラの登場によって白人社会は今後に恐怖を感じたものの、マンデラは実際には是…
本物と贋作の関係の講演からはじまって、しだいにトーンががらりとかわり、はじめは見知らぬ仲であった男と女が、自分たちの思いつきと意志のみで夫婦を演じてみる。 しかし夫婦というのはただ甘くて美しいのではなく、行き違いやら好ましくないこともえてし…
中国出身の囲碁の棋士、呉清源の生涯を描いた伝記映画。 棋士のことはよくわからないのだが、戦前にその天才ぶりを謳われてニホンを訪れ、戦前、戦中、戦後の運命の変遷を、比較的淡々と描いている。 比較的といったが、もちろん激動の時代であり、たいへん…
メキシコといってもじつはシティあたりではナルコ(ドラッグ)グループの存在による脅威というのは差し迫ったものとは感じられない。 それは北部諸州、またその他の地域において可視化されているが、この作品ではふつうの女の子がナルコ勢力にたまたま後押し…
フランスの片いなかの結婚式にて若い小学教師嬢と肉屋の男が知り合い、恋仲へといたる。 しかしこんな田舎でも猟奇殺人事件が発生。 しだいに小学教師は肉屋を疑っていくことになる。 この肉屋は第一次戦にも戦闘に参加していて、残虐なことを見聞きして、や…
イタリア人の母とマヤ人の血のユカタンのつつましい漁師を父とする五歳の子どもが、親の別れにもかかわらずひと夏を海辺で過ごす。 ささやかな住まいも海上で、祖父とともに素潜りで伊勢えびを捕まえて卸しに売ったり、沿岸でさまざまな魚を釣り上げ、贅沢は…
ニホンでも女子高生モノの映画作品は東映あたりがよく撮っていたことを思い出す。 メキシコのこの作品は、すでに他の学校を退学、放校処分になった者たちで前歴がだいぶあるらしい。 おもに十人の女の子が、集団であれこれ話し合うほかにエピソード的に自分…
メキシコの三大壁画家のひとりシケイロス、かれがアルゼンチンの篤志家に呼ばれて壁画を描きに出かけたエピソードを描いたもの。 当時はウルグアイ人の詩人ブランカ・ルスと関わりを保っていたが、1930年代のアルゼンチンへ到着してみると、当地の政治状…
カナダに住む中東出身の母親と双子の娘と息子、その母親が亡くなったことで娘たちは故国への旅を余儀なくさせられるが、ひとたびパレスチナ、レバノンなどの国へ足を伸ばすと、母親の以前の経歴、あるいは怖ろしいまでの国土のありさまなど、度肝をぬくよう…
結婚まぢかの若い米国人とその親がパリを訪問。 青年はライター志望であり、パリにぞっこん惚れるが、ついに憧れの戦間期のパリのアーティストに出会ってしまうにいたる。 フィッツジェラルドに始まってヘミングウエイ、コール・ポーター。 あるいはサルバド…
いうまでもなくフランスの傑出した映画監督アラン・レネによる、ナチズムの強制収容所、というか、民族の粛清という名目での大量殺人基地(ホロコースト)について語ったもの。 ドイツ民族と、他の抹殺されるべき民族という、自己と他者というコンセプトをは…