メキシコ映画「Cobrador, in god we trust」(2006)
・「Cobrador, in god we trust」、Paul Leduc, 2006, メキシコ
あのポール・レデュックの新作、じつに13年ぶりの作品が上映開始。
ブラジル人のルベン・フォンセカの短篇小説に基づいたこの作品は、ヴァイオレンスの映画ではなくて、ヴァイオレンスについての映画であると監督は説明する。
ブラジル映画「神の町(シウダ・デ・ディオス)」やら「アモーレス・ぺロス」などを思い起こさせるこの作品は、NYやマイアミ、あるいはメキシコシティ、リオ・デ・ジャネイロなどが舞台になっていて、その繋がり方を眺めると、さながらあの「バベル」の裏ヴァージョンであるかのような印象をもつ。
9/11以後、あるいはネオリベラル時代以降、ヴァイオレンスはとめどもなきものと化している。
物理的ヴァイオレンスのみならず、いわゆるこころの荒廃は深まるばかり。
ひどい、ひどい、と思いながら、なぜこうまでひどくなったのか、ということを観ながら考えさせてやまない。
そういう時代にわたしたちが取り残されているということだろうか。
ほかのトピックスでも触れたように、オスカーへはLuz silenciosaが、送られ、この作品は、あまりにも反米的であるためか、スペインのゴヤ賞に送られた、というのにすごく納得できる。
ちなみにメキシコシティのパートでは、カフェ・タクーバのライバル・バンド、マルディータ・ベシンダッダが出演し、あるいは、知るひとぞ知る、ティアンギス・デル・チョッポの光景も垣間見える。
ひさびさのピーター・フォンダもそれらしい役柄で、作品の翳を深めている。
(2007/11/17)