イギリス映画『あなたを抱きしめる日まで』(Philomena), スティーヴン・フリアーズ,2013 イギリス

『あなたを抱きしめる日まで』(Philomena), スティーヴン・フリアーズ, イギリス 例によって無垢状態で見てあまり期待はしていなかったがテーマ自体が大いなるスキャンダル性を帯びているほかに数奇な話をこれほどまでのナラティヴの発展へと導く技術に感心…

ニホン映画「犯された白衣」若松孝二、1967、ニホン

唐十郎の主演で若い青年の内面の弱さ、および小集団としての女が描かれるが向こう側まで達するためにはヴァイオレンスというメタファーが欠かせない。 悪とか行為についてまで考えることもできるがそれも狙いであったのかどうか。 少年の内面こそ解き明かさ…

米国映画『her/世界でひとつの彼女』, スパイク・ジョーンズ、2013、米国

『her/世界でひとつの彼女』, スパイク・ジョーンズ、2013、米国 都会の孤独のなかでOSのなかで生まれた女のひと(人工知能ということ)に恋する男の話。生身の女のひととはうまく行かず(離婚調停中でもあり)ヴァーチャルとしてフィクションとしての女…

米国映画"American Hustle(「アメリカン・ハッスル」)", David O. Russell, 2013, 米国

"American Hustle(「アメリカン・ハッスル」)", David O. Russell, 2013, 米国 おとり捜査によるサスペンス物、しかしそのチームは手際はよくても滑稽なところがあるのでヒューマンであるともいえる。とにかく騙し合いが徹底。 この手のものはあまり好きで…

オーストラリア・ドイツ映画"Lore(『さよなら、アドルフ』)", Cate Shortland, 2012, Australia・Germany

"Lore(『さよなら、アドルフ』)", Cate Shortland, 2012, Australia・Germany 女の子の感性が敗戦を迎えたドイツにていかに捻じ曲げられるか、すべてを担い、どんな苦しみを背負って弟たちと森を越えて生き延びなくてはならなかったか、ただただスクリーン…

米国映画"Blue Jasmine", Woody Allen, 2013, US

ウッディ・アレンの最新作『ブルージャスミン』見る。 中年セレブレディの転落ストーリーであり、いつものように神経症的トーン強し。 米国社会への風刺も上から下まで濃厚。 そんななかでもなんとか立ち直ろうとしながらもうまくいかないといういじらしさに…

ニホン映画「天使の恍惚」、若松孝二、1972、DVD

「天使の恍惚」、若松孝二、1972、DVD ニホンにおいて革命の先鋭たるゲリラの爆弾闘争とその指導方針とその分裂をめぐったもの。いわゆる目的は手段を正当化するという前提で在日米軍からいかに兵器を入手するかに血眼。そんな青春がかつては存在したの…

フランス映画“Only God Forgives(オンリーゴッド)”, Nicolas Winding Refn, 2013, フランス・デンマーク

“Only God Forgives(オンリーゴッド)”, Nicolas Winding Refn, 2013, フランス・デンマーク タイのバンコクを舞台にしたマフィアとポリスの抗争の作品。利権と抹殺ということはドラッグがらみの世界のどこにでも起きうる次元の話であり、非情なヴァイオレン…

フランス映画”Dans la maison(危険なプロット)”,François Ozon, 2013, France

”Dans la maison(危険なプロット)”,François Ozon, 2013, France フランソア・オゾン『危険なプロット』見る。洒脱な展開はウッディ・アレンを思い出させる。ある高校の作文の作成、そこでの家庭生活ということでテーマ自体に大きな意味はないがフィクション…

フランス映画"Populaire(「タイピスト!」)",Régis Roinsard.2012, フランス

"Populaire(「タイピスト!」)",Régis Roinsard.2012, フランス 地方の女の子が都会へと出ていくことを夢見て、優秀なタイピストになろうとしてすべてを犠牲にしながら企業トップおよび世界コンクールを通じてスターとなっていく。さらにはボスとのロマンス…

英国映画“Berberian Sound Studio(バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所)”, Peter Strickland、2012、U.K.

“Berberian Sound Studio(バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所)”, Peter Strickland、2012、U.K. イタリアのホラー映画製作のために呼ばれた英国人音響技師の奇妙な体験。映画製作の裏側を見せてくれるが遣り取りがちぐはぐで興が失せる。感情の無意…

チリ映画"Gloria(グロリア)", Sebastián Lelio, 2013, Chile・Espanaチリ・スペイン

見始めたらそんなに面白そうな作品でもないような気がしたが、じつはけっこうインパクトをあちこちで生んだ作品であったらしい。 夫と別れ成人した子どもたちからも離れた女の生と性。 有能ではあるが空虚さをいかに埋めるかに苦慮。 いろいろなことを試して…

フランス映画"La Maison de la radio(ラジオの館)", Nicolas Philibert (2013),France

フランスの誇るドキュメンタリー映画作家が、フランス国際ラジオ局のまる一日の活動を追った作品。 なるべく包括的な視野を得ようと心がけながら、それでもオフィシャルではない、明と暗の双方を描いている。 しかしその中心はこれだけの放送を実施するため…

ニホン映画『そして父になる』是枝裕和, 2013年、日本

『そして父になる』是枝裕和, 2013年、日本 六年経過後の赤ちゃんの取り違い事件の経緯、はたして六年いっしょに暮らしてきた者といかなる感情的(愛情的)合理化をはかればいいものか、もちろんだれでも当惑する。しかし結局、血のつながりが尊重される。 …

米国映画“Lee Daniels' The Butler『大統領の執事の涙』”, Lee Daniels ,2013, 米国

“Lee Daniels' The Butler『大統領の執事の涙』”, Lee Daniels ,2013, 米国 米国史を語るとき、あるいは黒人の市民権を考えるときに、ホワイト・ハウスの黒人執事の立場から描くとはなんとインテリジェンスのある方法論であろうか。米国の政治を牛耳る面々と…

フランス映画“Camille Claudel 1915(カミーユ・クローデル1915年)”, Bruno Dumont, 2013, France

“Camille Claudel 1915(カミーユ・クローデル1915年)”, Bruno Dumont, 2013, France この作品について語ることは、この女性アーティストについて語ることにほかならない。984年ごろにカミーユについて新しい著作が著されたためか世界でカミ―ユへの関…

ギリシャ映画"Alps(アルプス)", Yorgos Lanthimos, 2011, Gracia

現代のギリシャにて死と向き合った家族たちをいかに再生させ共生させるかという重いテーマであるが主人公の看護師の動き方がすべて想定外を示すのでプロットを理解できず。 国際的にはかなりの評価を得ているのでおそらくはわたしの側の問題か。 不条理性の…

日本映画『日本春歌考』、大島渚、1967、ニホン

『日本春歌考』、大島渚、1967、ニホン 大島渚が青年の性やら情念の持って行き場のなさを描いた作品だと受け止めることもできるが、なかば即興性を含んだこの作品は他の作品で発展するであろういくつかの点を荒削りに示したものともいえる。その意味では…

米国映画「ゼロ・グラビティ」アルフォンソ・キュアロン、2013、米国

「ゼロ・グラビティ」アルフォンソ・キュアロン、2013、米国 宇宙遊泳なるものが危険であることは、初めて試みた旧ソ連のレオーノフ飛行士のときからみながじゅうぶんに認識していたはず。それが近年は宇宙ゴミなるものが襲ってくるものだからさらに危険…

ポルトガル映画「O Gebo e a Sombra(ゲボとその影)」、Manoel de Oliveira, 2012, Portugal & France,

O Gebo e a Sombra(ゲボとその影)、Manoel de Oliveira, 2012, Portugal & France, 104歳という驚異的な年齢でもって監督の仕事をこなしていくポルトガルの巨匠。 まったく地味な作品でもちろん低予算ではあるが、フランス資本に頼らなくてはならなかった…

米国映画“Mud(マッド)”, Jeff Nichols, 2012, US

“Mud(マッド)”, Jeff Nichols, 2012, US 米国南部のミシシッピー河沿いといえばそれだけでその雰囲気に呑まれてしまう。 ふたりの10歳前後の少年が孤高を保つ、どうやら逃亡人らしい若い男とかかわる。 わたしが注目してしまったのは、この男が木の上に引…

メキシコ映画“Fecha de caducidad(有効期限)”、Kenya Márquez、2011、Mexico.

“Fecha de caducidad(有効期限)”、Kenya Márquez、2011、Mexico. 亡くなった息子を捜しに身元不明死体収容所を訪れる母親の話から始まるがストーリーは錯綜し、その構成も工夫されている。不気味さに占められ、あまりいい趣味には思えないグロさ…

イタリア映画“Cesare deve morire” 塀の中のジュリアス・シーザー 、Paolo Taviani, Vittorio Taviani、2012, Itali

“Cesare deve morire” 塀の中のジュリアス・シーザー 、Paolo Taviani, Vittorio Taviani、2012, Italia. イタリアの監獄にて重罪囚人たちがすぐれた指導の下でシェークスピアのシーザーを演じようと訓練する。しだいに熱が入ってきて公演は輝かしい…

フランス映画"Les saveurs du Palais"(大統領の料理人), Christian Vincent, 2012, France

"Les saveurs du Palais"(大統領の料理人), Christian Vincent, 2012, France シェフについてのフランス映画ならば以前におなじく「シェフ! 〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜」の印象が残っていてそこではジャン・レノがシェフをつとめていた。 この…

フランス映画『ルノワール 陽だまりの裸婦』(Renoir)ジル・ブルドス, 2012.フランス

[] 『ルノワール 陽だまりの裸婦』(Renoir)ジル・ブルドス, 2012.フランス ルノワールは昔からニホンでも広く愛されてきた画家である。夢のような、柔らかいトーンはだれにでも好まれる。しかしルノワールの第一次大戦の空気を吸ったのであり、フランスの…

米国映画『トゥ・ザ・ワンダー』、テレンス・マリック、2012年

『トゥ・ザ・ワンダー』、テレンス・マリック、2012年、米国 男と女とのどこにでもあるような恋愛譚で、情熱があれば失望もあるといった具合。映像はたとえようもなく美しく、まるで観光プロモーションのごとくで、それだけで圧倒されてしまってもおかし…

メキシコ映画“Miradas multiples”, Emilio Maillé, 2012, Mexico

“Miradas multiples”, Emilio Maillé, 2012, Mexico いまでこそメキシコの映画は世界的に注目されているが、かつてはメキシコの古き良き時代を一心に映し出している伝説的な撮影監督ガブリエル・フィゲロアなる人物が存在した。 メキシコ映画の黄金期ともい…

ドイツ映画「ハンナ・アーレント」、マルガレーテ・フォン・トロッタ、2012

「ハンナ・アーレント」、マルガレーテ・フォン・トロッタ、2012、ドイツ 高名なドイツの思想家ハンナ・アーレントの伝記映画のような体裁を持つ。わたしにとってはその詳細を知らぬ思想家だったので、学ぶことが多く、その知性と感情生活とが同時に描か…

「バニシング・ポイント」の監督亡くなる

高校生だったころはあまり映画館へ通うことがなかった。 そんなごくわずかな映画作品のなかでとりわけ印象深かったのは、リチャード・セラフィアン監督の「バニシング・ポイント」という作品。 いわゆるロード・ムービーで走行中に官憲に眼をつけられ、大捕…

メキシコ映画“Heli”, Amat Escalante, Mexico, 2013

“Cesare deve morire” 塀の中のジュリアス・シーザー 、Paolo Taviani, Vittorio Taviani、2012, Italia. イタリアの監獄にて重罪囚人たちがすぐれた指導の下でシェークスピアのシーザーを演じようと訓練する。しだいに熱が入ってきて公演は輝かしい…