メキシコ映画「Lake Tahoe」(2008)
・「Lake Tahoe」Fernando Eimbcke 、メキシコ(2008)
「ダックシーズン」がわりとヒットした監督による第二作目。
前作の役者をふたりつかい、ユカタン半島のひっそりとした街にて撮影され、ほとんどパーソナルムーヴィーの印象あり。
主人公の少年が、ブルーバード(ツル)で電柱に衝突し、その故障のためにあちこち修理工場などをまわるという、強制されたコミュニケーションの建て方。
といっても、この少年、かかりあうのはたった三人。
犬とのみ暮らす老修理工はハンモックから動こうとしない。
部品屋のねえちゃんはシングルマザーでまだ、女の子であるが、ありふれた毎日がいやでいやでたまらず、なにか起こってほしがる。
空手キチの修理のニイチャンも、おたく性のみがきわだつ。
しかしどの登場人物も、意識しているかいないかにかかわらず寂しさが色濃く、何かがひとをもたらしてきてほしいと思っているようにみえる。
主人公の少年は、ひょろひょろとしていて、肉体性にとぼしく、いかにもたよりなく、ほかの人物も、空手キチをふくめて、肉体的には貧弱。
相応しいコミュニケーションなしでは、これから立ってはいけないようにみえる。
その点では、たとえばシャーウッド・アンダーソンの「ワインズバーグ・オハイオ」を思い起こさせる。
この少年のうちでは、父親が亡くなったばかりで、母親も幼い弟もそして少年自身も、精神の均衡をみだしている。
静かに静かにだが、このふたりの兄弟は、それでも出口を見出そうと試み、なんとか見つかりそうである。
(2008/12/08)