2011-06-01から1ヶ月間の記事一覧
美とは怖ろしいものである。 ドストエフスキーが、あるいはミシマがそれを語ったりする。 ひとが内的リアリズムの軸を美学だと定めたとき、その美とは完全性とつねに一体化するがゆえに、えてしてひとは自分を見失いさえする。 ほかのひとからは、うつろな、…
フランスにて幼い息子をあいだにはさみ、深く愛し合うカップルの奥さんのほうが殺人の冤罪によって刑を科される。 状況証拠からみても判決を覆すことは困難、家族が崩壊の淵に立たされることをみかね、温厚だったはずの夫が綿密に脱獄計画を練り、目的が手段…
ウッディ・アレン、41作目だという。 もうここまで来ると、はたして自分の見たのがどれで、見てないのがどれかなんて、しばらく考えないとわからない。 よくいえば職人芸的でインテリさが光り、はずれがない、悪く言えば同工異曲。 しかしこの作品You Will…
ジョン・キーツとその婚約者との悲しい愛の物語。 美しく、静かな話がつづくが、もちろんその底には清楚で激しい愛のゆらめきが脈打つ。 キーツは夭折したイギリスのロマン派詩人、わたしも対訳詩集(英語と西語)を持っているが、その世界にはいっていくの…
イタリアが戦中、戦後をいかに生き抜いていったかを、エピソードの積み重ねによって描く作品だと思った。 しかし本土ではなく、島嶼部であり、しかもある家族がとりわけ描かれているのに気づく。 戦中、戦後史といったものをどう語っていけばいいものか、こ…
北ドイツの農場にて奇怪な事件が相次ぐというミステリー仕立て、そうでもしなければこんな暗い話に観る者をひきつけておけないといった具合。 犯人捜しは、まず外部の人間を考えるが、それは困難でもあり、明かされない真相はだれの胸にも宿るにいたる。 そ…