フランス映画「Etre et avoir(「ぼくの好きな先生」)」(2002)

 「Etre et avoir「ぼくの好きな先生」)」、Nicolas Philibert、フランス、2002

 Etre et avoir、これが原題、なんかサルトルハイデッガーの論文のような名。このフランスのドキュメンタリー(2002)は、何回か見逃してて、それでも神のご加護で(髪の、って書こうとしちゃった、うん、まだ髪、あるもん)、やっと今日、チョッポにて観られる。監督はNicolas Philibert。

 フランスの田舎の小さい小学校、生徒数は十五人以下だが、年齢はまちまち。小学前のこどももいる。それを一人の男の定年直前の先生が面倒を見る。
 ニホンでもひと昔まえまでは、ひとつの教室で二学年教えるというのは地方ではさほどむずかしくなかった。 
 でもこういう少人数なら、やはり手が行き届く。先生はすごく優秀というのではなく、実直なひと、といえばいいのかな。とにかく、親身になって生徒に近づく。もちろん問題を起こすような子どもはどこにでもいる。それにきちんと向き合う先生は、いまでは偉大。むかしはけっこう当たり前だったろうけど、いまのニホンでは実直な先生って、滅亡種族なんではなかろうか。

 学校というのは歴史上はいうまでもなく国家機構の一環であり、地方固有性とは敵対してきたものだ。良心的な教師というのは、つねに板ばさみになってきた。一般に地方の閉鎖性が非難されてきた。なんていうんだっけかな、ヴァナキュラーというのだったか、なんだっか(イバン・イリッチなんかが言ってる)が再評価されるべきなので、ここにきて評価体系が逆転しているといっていい。

 まあ、硬い話はいいとして(笑)、こどもの個性が印象に残る作品。すごく面白いというわけではない。気を抜いてると眠くなりもする。しかし、ここから何を受け取り、抜き取ればいいのかわかれば、示唆に富んだ作品、ということになると思う。


                    (2006/04/23)