イタリア映画「Il conformista(暗殺の森)」, Bernardo Bertolucci, 1970、イタリア、フランス、西ドイツ

イタリアにおいて、いわゆる活動的なファシストの内面にはどんなものが巣食っているのかを解き明かそうとした作品。
 原作はアルベルト・モラビアの「孤独な青年」で、子どものころのトラウマからひとがなぜ歪んでいってしまうのかを叙述する。
 ジャン・ルイ・トランティニャンの演じる暗殺者は、新婚旅行も兼ねてフランスへと向かい、逡巡もするが、組織の一員でしかありえなくなっていた。
 そのあいだに昔からの恋愛沙汰の名残りまで浮かび上がってきて、同伴の新妻は幼稚なところもあるが、感受性が素直でその場その場の対応が自然。
 それに時代を経ることによって奥さんは聡明さを得ていくが、ファシストは凡庸なままで受け身でしかいられない。
 ドミニク・サンダ出世作、美しい。

 こんなファシストの心理描写は、大江の右翼少年の描写を思い出させる。