"A better life", Chris Weitz, 2011, 米国

メキシコシティのつぎにメキシコ人の人口が多いとされるロサンジェルス、その米国においてのメキシコ人をはじめとする不法就労者の話はいままでずいぶん、映画にも撮られてきた。
 米国社会は不法労働者を搾取することなしには成り立たないのにもかかわらず、排外的な手段を移民局らが適用し、見つけ次第、強制送還を実施、したがって怯えて仕事に就くことになる。
 この作品では、さらに不法労働者に子弟があり、かれらは社会的差別の結果として誘惑に負けやすいという点が示され、その視点が新鮮。
 この作品では不法労働者のあいだでの窃盗も持ちあがり、しかしどちらも切羽詰まっているということで神話的相克さを帯びてきて痛々しい。
 それぞれ各自が必死で、その結果、トラブルが巻き起こる。
 そんな渦中、父と子との絆が強まるという結果に至り、それはメロドラマっぽくてちょっと引いてしまう。
 とにかく、社会的な問題と家族の問題を緊密に混ぜ合わせた、たいへんよく書かれた脚本であると思ったし、低予算でもこれだけの迫力のあるものが造れることに感心。

(23 of October, 2011)