米国映画「Into the wild」、Sean Penn, 2007, 米国
米国の物質文明を唾棄するクリスは大学卒業を機に、自然へと一人旅に出る。
自然のなかになにかを捜すというよりも、自然のなかの自分を確かめたかったのではないかと思う。
しかしそのプロセスにてやはり自然に惹かれた、というか自然に生きているひとたちと出会っていく。
クリスが奔走を思い立ったのは、偽善的な両親に嫌気がさしたということもあった。
トルストイやらソーローを信じ、いままでの代償のように、いい子であることをやめて自分をみつめる。
これは米国文明へのひとつのアンチテーゼである。
そして行き着いたのは酷寒のアラスカの地。
その過酷な自然で自分を試してみられるが、障害ともなる周囲の河を眺めていると、このへん、開高さんだったら釣りを堪能するんだろうな、と思い、森のなかから開高さんを眺めているクリスはいったいどんな会話をかわしただろうかなんて想像もしてしまう。
結果として事故のように毒草を食べてしまい、無念な死をとげる。
米国文明への挑戦は挫折したかっこう。
しかし、この記録を残したことで、その名は刻まれていることだろう。
「アメリカン・ニュー・シネマ」との比較が望まれる。
米国映画にはめずらしくハッピーエンドに終わっていないところがりっぱ。
(27 of September, 2011)