フランス・イタリア映画「Copie conforme(トスカーナの贋作)」、アッバス・キアロスタミ、2010、フランス、イタリア
本物と贋作の関係の講演からはじまって、しだいにトーンががらりとかわり、はじめは見知らぬ仲であった男と女が、自分たちの思いつきと意志のみで夫婦を演じてみる。
しかし夫婦というのはただ甘くて美しいのではなく、行き違いやら好ましくないこともえてしておこりがちで、短いあいだのことなのに夫婦といったものの本性をみせつける。
そこがこの作品の見どころとされているのだが、じつは冒頭から英語、フランス語、イタリア語が乱れ飛ぶ世界が押し出されてきて、つまりはディスクールについての作品なのではないかと思えてくる。
もともとイランの名監督であるこのひとも、ヨーロッパ語の圏外にあったわけだが、コミュニケーションと言語というものが、考えられていないはずがない。
人が主で、ことばが従か、それともその逆か、しばし案じてしまう。
DVDにて。
(19 of September, 2011)