アルゼンチン映画「El mural de Siqueiros(シケイロスの壁画)」、Hector Olvera, 2010, アルゼンチン、メキシコ
メキシコの三大壁画家のひとりシケイロス、かれがアルゼンチンの篤志家に呼ばれて壁画を描きに出かけたエピソードを描いたもの。
当時はウルグアイ人の詩人ブランカ・ルスと関わりを保っていたが、1930年代のアルゼンチンへ到着してみると、当地の政治状況が錯綜しているのに驚く。
ファシズム対コミュニズムというヨーロッパでの構図がそっくりそのまま持ち込まれていて、シケイロスが自分の思想を表明するのもあまり容易ではない。
篤志家たる政府に批判的な大新聞の社主もひと皮むいてみるとブルジョア趣味が濃厚で、しかもその家庭のなかも錯綜
ブランカ・ルスの奔放さをはじめ、そんな二重、三重の絡み合いのなかでシケイロスはばか正直に突き進んでいく印象。
この映画作品は、その後、長らく忘れられていたこの壁画が、さきほどメキシコ大統領のアルゼンチン訪問をきっかけに修復されたのと関係があるらしい。
わたしはあまりシケイロスが好きではないが、その生の一面をくっきり描いてくれるのでおおいに感銘したしだい。
シケイロス役はメキシコ人俳優ブルノ・ビチルであるが他はすべてアルゼンチン陣。
いかにもアルゼンチン映画の厚さを実感させられる。
(28 of August, 2011)