メキシコ映画「El Baile de San Juan(サン・ファンの踊り)」、Francisco Athié 、2010、メキシコ

いまだスペインの植民地、のちのメキシコではカースト(casta)制が根強く、身分制のもとで窒息するかのような雰囲気につつまれていた。
 宮廷(貴族界)にて舞踊や祝宴をつかさどる一家は、政治的に苦渋をなめる。
 しかしこの社会では虐げられているもののあいだでも文化の息吹はみとめられた。
 この一家の息子がひとランクうえの娘と恋仲におちいり、はては悲恋におわるのだが、これがこの作品のメイン・ストーリーといえる。

 繰り返しになるが、この窒息するような社会は、つぎの時代へのエネルギー(の爆発)にみちていて、だからこそ文化の爛熟性がたかいといえる。
 この矛盾にこそ美があるといえる。

 この作品では踊り、音楽に観るべきものが多く、それに一部の研究で繰り返し指摘されているように、メキシコでの黒人文化というものへの眼差しがすぐれている。


(28 of april, 2011)