タイ映画「Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives(「ブンミおじさんの森」)、アピチャートポン・ウィーラセータクン、2010、

むかし、国際交流基金が東アジア映画祭を催したころから、アジア映画に興味をもち、覗き見てきた。
 たとえばアジア映画というとき、近代化以前の伝統的社会をどっぷり写し取ったものがいっぽうであり、またもう一方では近代化の渦中でどんな矛盾があらわれ、ひとびとはどんなことにさらされるか、というものを描いた作品がある。
 このタイ映画はカンヌにて受賞、ティム・バートンらがいたく気に入ったらしい。
 タイといってもその田舎の死生観、というより死のもっと向こう、あるいは死が生とあまり対立項として存在しないところを描き、神話的でもある。
 しかし映画的にみれば、冗長さはまぬがれえず、成功した作品とはいいがたいかもしれない。
 それは欧米流の映画作法に染まったわたしの偏見だろうか。
 より締まった作品に仕上げるのも、じつは躊躇してしまう。


(25 de marzo, 2011)