オーストリア・イタリア映画「La Pivellina」、Tizza Covi, Rainer Frimmel, 2009, オーストリア・イタリア



 どんな名優、女優も子役には食われてしまうものだと俗にいわれる。
 サーカスで働く老いが目立ってきた夫婦、そのおばさんが取り残されていた女の子を見つけ、自分のところに持ち帰る。
 ふうつならそれこそ誘拐にあたいするが、このおばさん、冴えないようでいて飄々とし、何ものにもめげない。
 この夫婦、それなりにいがみ合うが、いがみ合ったところで仕方がないとわかっているのか、お互いがうまくやりこめるような具合で、けっきょくうまがあっている。
 そんなふたりに女の子もなつき、団地の駐車場に長くいるものだから若い男の子とも友だちづきあいするようになる。
 おじさんのほうは、声がかかればそれなりのサーカスに出稼ぎにいく。
 おばさんのほうも、ナイフ投げの標的になりつつ身をかわすときなど、かつての色気の片鱗が感じられもする。
 そんな夫婦の住まい(キャンピングカー)には、味のあるひとたちが集まってくる。
 社会的にはマージナル層とされるであろう芸人やらはみ出し者は、とりたてて鬱屈しているわけではなく、これまた飄々としたもので、生きることを愛している。
 そう、恵まれていることだけがシアワセの源ではないのだ。

あつかましく、ざっぱくであるようなこのおばさんの生き方に一票!


             (2010/11/20)