メキシコ映画「Tin Tan」Francesco Taboada、2009、メキシコ
パチューコということばをはじめて聞いたのはもちろんオクタビオ・パスの著作でのことであった。
北部の奇抜な恰好やら言葉遣いをするひとたちということで、チカノとも似ているが、よりアイデンティティに意識的である。
ようするにメキシコと米国という相対立する文化のなかで育まれた、あるいは切磋琢磨されてきたひとたちである。
ティン・タンといえばメキシコを代表するコミック・タレントであり、それほどポピュラーカルチャーに詳しくないわたしでもそのくらいは知っている。
しかし恥ずかしながら、このティン・タン、あのフアレス市出身で、メキシコシティに出てきたものの、当初はその振る舞いについて反撥をしばしばかったという。
しかし新語続出させつつ、そのスタイルは一世を風靡する。
メキシコ映画史上で、スクリーンにてもっとも多くの女優さんとキッスした俳優さんなのだという。
なぜこれほどまでメキシコで受けた人物なのか。
その笑いの質が高かったというのがいちばんで、唄もうまかった。
軽薄そうでいて、お調子者、理想のメキシコ人とはあまりにもかけ離れているが、それでも好かれるのだ。
(2010/11/14)