メキシコ映画「Rabia」、Sebastián Cordero、2009、メキシコ、コロンビア、スペイン



 スペインの富裕な老夫婦のもとで働く、南米からのメイドさんがいる。
 おなじく南米からの青年がメイドさんと恋仲になっている。
 このホセ・マリアは建築業に勤めるが、上司と衝突し、殺人までおかす。
 
 このホセ・マリアは富裕な老夫婦の屋敷に忍び込み、屋根裏にひっそりと隠れ住む。
 メイドさんがひとりのときを見計らって二階に降り、一階のメイドさんに電話をいれて話し込む。
 こうしてホセ・マリアの子を孕んだメイドさんの一挙一動を見守る。
 老夫婦のひとり息子が時々立ち寄るが、あまり勤勉とはいえないようで、メイドさんに言い寄り、犯してしまう。
 じつにありふれた、俗っぽいテレノベラ風である。
 見かねたホセ・マリアは酔いつぶれたひとり息子を殺害するにいたる。
 
 メイドさんの妊娠が知れ渡り、たいていは解雇にいたるのだが、老夫婦は保護者的に立ち回る。
 そのあいだもホセ・マリアは一心に見守りつづけるが、しだいに衰弱がすすみ、メイドさんに「再会」したときに果てる。

 ストーリーはこの通りであるが、その核心はどこにあるのか。
 このホセ・マリアの怒り、苛立ちは、行き場がなく、自分に跳ね返ってこざるをえない。
 そこに悲劇があり、行為の是非以上に、閉塞感を味あわせられることになる。


             (2010/11/07)