メキシコ・スペイン映画「Biutiful」、Alejandro González Iñárritu、2010、メキシコ・スペイン


ここでわたしたちの知っているバルセロナとは異なった街が現れる。
 不法移民労働者の街である。
 アフリカからの黒人移民は、スペイン語圏アフリカにかぎったことではなく、しかも違法露店を営み、官憲とのトラブルがたえない。
 中国人移民もいて製造業などに従事するが、待遇は過酷、しかし本国でのより惨い暮らし向きから考えれば、不平ばかりも言っていられない。
 ここにあるのはガウディのバルセロナではなく、不法移民のバルセロナ

 そんな連中を相手を取り仕切っていくハビエル・バルデムは、ふたりの子どもを大事にしながら自分の死期も意識する。
 死についての思索も深みあり。
 自分の死までに出来ることをしておきたいと切に願い、その一途さこそがこの作品の命である。

 つまり社会的な構図のなかで個人の運命を考えるという、まったく正当な造り方。
 しかしアンダーグラウンドさんが充満しており、とてもハリウッド物にはできないこと。

 プロデューサー・グループのなかに Ikiru Filmsなんてのがある。
 そうか、黒澤の「生きる」からもインスパイアされているのかと合点。

 かくして素晴らしい内容であるが、話されているスペイン語がにょごにょご調でわたしには聞き取るのがだいぶ困難で。どこまでわかったものかじつはおぼつかないのでもあった。


(2010/10/24)