イタリア映画「Vencere」、Marco Bellocchio、2009、イタリア


 歴史の暗部を描く。
 ヒットラーと比べるとムッソリー二の実像というのはあまり描かれていないと思う。
 ムッソリーニの初めの夫人となり息子も持つが、のちにムッソリーニにより否定され、母子ともども精神異常者として隔離・幽閉されてしまった二人について叙述。
 もちろんムッソリーニ自身の転変もふくまれる。
 映画の職人芸としての手腕も豊富すぎるほどの監督による意欲作。
 集団としての歴史を、いわばインサイドストーリーとしてとらえる。

 この(創られた)狂気を通して歴史と社会を描くというのは、あのブリキの太鼓、にも似通っている。
 あるいは集団的狂気というものは、個人的狂気というレンズを通してでもないとイメージをもてないということか。

2009年のカンヌにも出品。


(2010/09/19)