米国映画「インセプション(Inception)」、Christopher Nolan、2010、米国


 夢の多重構造などを、もともとはボルヘスの短篇などにより、典雅に繰り広げたもの。
 生臭い話がからまり、ポピュラーな映画の要素、重火器やら逃走劇、ファイティングなどがちりばめられ、おおいに見世物として成功している。

 しかし話が派手になればなるほど、観ているわたしは自分の殻に閉じこもるのだった。
 「記憶」と「思い出」のちがいはなにか、「夢」と「ヴァーチャルな世界」とのちがいはなんなのか、眼を閉じて考え込みたい誘惑に突き動かされていた。

 よりシンプルなかたちで、こんな内容のものを綴ってみたい気持ちがやまない。
 ただしボルヘスを乗り越えることなど夢物語にすぎないだろうが。
 わたしは、あくまでも自分のみる夢のヴァリエーションの世界だけで生きていこうと堅く決心する。


(2010/08/02)