メキシコ映画”Norteado"、Rigoberto Pérezcano、2009、メキシコ


オアハカに家族を残し、アンドレスは米国へ働きに行くつもりでティフアナ(ティワナ)までたどりつく。

 しかし塀を越え、砂漠を横切る試みは米国のボーダーパトロールにより、ことごとく挫折。

 転がり込むようにしてたどりついたティフアナの雑貨店にて仕事を手伝い、食肉工場でも働く。

 雑貨店には母娘が働いていたが、やがてこのふたりとも、夫が米国へ働きに出たまま行方不明になっていることをアンドレスは知る。

 ここは挫折の吹き溜まりなのか。

 しだいにアンドレスはふたりにかかわっていき、いっぽう店には他の初老の男も出入りしていて、女とかつてなにかあった模様であるが、こうして擬似家族のようなものの人間関係が形作られる。

 このティフアナでの暮らしは、いちおう満足すべきもののようにみえるが、それでもアンドレスは米国へ乗り出すことに執着する。

 似通った作品の多いなかで、この作品の教えるものはなにか。

 米国にむやみやたらに出かけなくても、働く気さえあれば、国内でもなんとかなるということ。

 それと相反するようであるが、米国へ乗りだす過程で初志がゆるぎ、あたらしい環境になじんでしまうということ。

 ティフアナというと、いまでは怖いというイメージばかりが先行するが、そこのひとたちの地道な暮らしにも暖かいまなざしがおくられている。


                (2010/04/25)