ペルー映画"La teta asustada(悲しみのミルク)",Claudia Llosa, Peru-España, 2009
ちょうど80年代のペルーではセンデロルミノソというゲリラグループと政府との争いがはげしく、おおくの市民、ひとびとが犠牲になる。
主人公の女の子ファウスタは二十歳前後、しかしその母親がそのあおりをうけ、レイプの犠牲者に。
授乳をつうじて母親の哀しみが娘に伝わったとされる。
ファウスタは恐怖に支配され、そのトラウマから逃れるためにポテトで栓をするが、ポテトも生きているからいろいろ弊害も出てくるらしい。
ファウスタも近親の者たちに囲まれながら、生き延びるために必死で、お金持ちの家に女中奉公に出るが、そこでもいろいろな経験をつむ。
描かれる現在においてはかつての争いはうかがえないものの、ペルーの周縁地域の暮らしの全体像を押し出しながら、貧しいひとたちの環境を映しながら、いまもなお引き裂かれるような生がせまってくる。
なんとみなが健気に生きていることだろうか、母親の亡骸さえたくみに防腐し、保存する。
いわゆる魔術的リアリズムを志向しているようで、一方、なんともリリカル、しかもスペイン語、ケチュア語での呟くような唄はえがたい。
この作品、去年の二ホンでのラテンアメリカ、スペイン映画祭でも上映され、好評をはくしたらしい。
今年のオスカーの外国映画部門でも、アルゼンチンの"眼の秘密"とともに最終ノミネートされている。
(2010/01/24)