フランス映画『ココ・アヴァン・シャネル』(Coco avant Chanel)アンヌ・フォンテーヌ、フランス、2009

オドレイ・トトゥがシャネルを演じるというので評判になっている。
 ポスターはよく撮れているが、ここでのオドレイ・トトゥは、どちらかというと藤田弓子のように見えてしまう。

 ココは唄が好きな、どこにでもいるようなお針子娘、このお針子娘というのは、あのスワン氏(もちろんプルースト)がよく手を出すので、どの娘もおなじに見えてしまう。

 しかし庇護者を見出すのにすぐれていて、それもひとつの才覚といえるかもしれない。
 気まぐれ程度の帽子の細工からはじめて、実力、それになによりも運とにめぐまれて上昇していく。 
 時代は貴族からブルジョアへと移り変わり、庇護されているとはいっても、やはりお針子娘出身のために、日陰的存在をしいられる。
 しかしその陰でどんな愛を生きていたかが、この作品での焦点になる。

 どんな人物の陰にもドラマがあるということか。

 ちなみに調べてみると、シャネルの伝記映画はほかにもあり、しかもシャネルは対独協力により、母国では愛憎の混じった受け止め方をいまでもされているらしい。

 祖国の闘志になれなかったシャネルか、切なさの瞬間に生きることだけを運命づけられていた、不幸なおんなと見るべきなのか。

 予想外にフランス史の意外な一面をみせられた感じ。

 見たのは先週の土曜。


(2009/10/21)