米国映画「The Soloist(「路上のソリスト」)」Joe Wright、米国(2009)


精神的に異常をきたしてしまっている黒人チェロ(ヴァイオリン)奏者と、白人ジャーナリストとの絡み合い。

 米国のアフリカ系黒人がなぜクラシック音楽を?などと問うてはいけない。「バグダッド・カフェのあの男の子も紙の鍵盤でバッハを弾いていたではないか。

 しかし、このふたりの絡み合いは、しっくりいかない。
 境遇があまりに異なっていることも事実だが、黒人のほうがトラウマにとらわれている。
 このインコミュニケーション性こそ、わたしにとってのこの作品の魅力だと思う。
 安易なハッピーエンドやら、分かり合いなどに逃げていないところがりっぱ。
 というか、いまの米国映画が取り付いているものから、ずっとかけはなれたものとなっている。
 セックスもお金も権力も女も、余分なものはからんではこなくて、その意味ではすっきりし、じつに健康的(笑)。

 観てすぐ愉しめるものではないが、なにかすぐにわからないものが描かれている、というのが魅力。

 オブセッションのように、ベートーベンの第三が繰り返される。
 のだめの第七番と対照的。

 米国文化論にも異なった照らし方を試みている。

 すでにニホンでは上映済みらしい。


(2009/10/04)