メキシコ映画「Los Herederos(「受け継ぐものたち」)」Eugenio Polgovsky、メキシコ(2007)



ニホンにおいても明治新政府になり、学制発布ということで義務教育が開始されると、労働力を奪われるとみなした親たちは反対したのだという。

 メキシコにおいては、とりわけ地方においては仕事の現場に投げ出されている子どもがうじゃうじゃいるらしい。

 しかも、子どもにも自分のくいぶちぐらい稼がせようなどという生やさしいものではなく、与えられた仕事を器用にこなしていくのが、このドキュメンタリーでも目撃できる。

 子だくさんだから働かせるというだけでなく、子どもも貴重な労働源であり、子だくさんは資本を多く抱えている(笑)という意味でもあるらしい。

 監督自身の個人調査のような形で、いろいろな州の労働現場にて子どもの労働がせまってくる、季節労働者にちかいようなかたちで。

 薪を集める、谷から水をくみあげる、トマト、チレ、インゲンなどの収穫、泥煉瓦の製作、機織機、どこでも半人前なんていうことはなく、いっぱし仕事をこなしている。

 それでいて、支払いは半人前以下ということがあるらしい。

 子どもはベンキョウすること、いやそれ以前に遊ぶことが大事なはずなのに、幼年期をもたない子どもたち。

 なんと不幸な子どもたちと嘆くことは容易だ、しかしこういった国の現状を考えると、都会に出るしかない家族とちがって地方にいたまま、自分たちの住居を拠点としたまま生きていけるということだけでも、じゅうぶんシアワセなのかもしれない、反語的ニュアンスを盛り込んでのことだが。

 メキシコだってベンキョウを放り出して、ニンテンドーやらゲーム機器の虜になっている子どもは多いし、しかもTV漬けにちかい。

 そんな子どもたち、あるいはニホンの塾通いやらイジメやらの子どもとくらべて、この子達が絶対的な意味で不孝か、といわれると一瞬、逡巡してしまいそうだ。

 
                  (2009/09/27)