オーストリア映画「Import/Export」ウルリッヒ・ザイドル Ulrich Seidl、オーストリア、2007
ウクライナで看護婦暮らしをしながら、赤ん坊と母親をまかなうオルガはお金にこまり、ヴァーチュアル・セックスの仕事に足を突っ込んでみるが、納得がいかず、オーストリアに出稼ぎに出る。
うまく行ったような家政婦の仕事もクビに。
さいごには老人養護施設に雑役婦としておさまる。
この作品の半分は、オーストリアの若者ポールはいちおうマジメではあるが、ガードマンの仕事をクビになり、うさんくさい義父と、ゲーム機器をチェコやウクライナへと運び出す仕事にかかわる。
荒れ果ててだれも住んでいないような団地にジプシーグループが住んでいたり、悲惨な光景を目の当たりにする。
それでも仕事で儲けて、義父はウクライナでおんな遊びに耽る。ポールはがまんができず、仕事をなんとか探し出そうと出かける。
オルガは老人養護施設でも、オーストリア人看護婦から差別をうける。
オーストリアでも半寝たきりの老人たちが、不満と不安のなかですごす。
オルガはウクライナ語を知る老人と仲良くなり、願いを聞き入れ、物置でドイツ語ヴァージョンのタンゴをいっしょに踊る。
この老人は、翌日、心臓発作で亡くなるのだが、孤独と焦燥のなかでいたずらに命を永らえる他の老人からみればずっとシアワセだったといえそうである。
老人たちは死を待つことだけで身を苛みながら、日々をすごす、これといった目的もなく。
寿命が長くなることに浮き立っているのはニホンだけではなく、ほんとはいかに死ぬかこそが本質的な問題なのに、微妙な価値判断が加わってくるからか、本気で考えるひとはあまり多くない。
ナショナリティやらセックスなどが、ひとがいかに生きるかには関わってくるが、行き着くところは、死をどう生きるかであるとこの作品は語っている。あるいは、セックスと死。。。
(2009/08/16)