イスラエル・フランス映画「The Band's Visit(「迷子の警察音楽隊」)」(2007)


・「The Band's Visit(「迷子の警察音楽隊」)」Eran Kolirin、イスラエル・フランス(2007)

 イスラエルイスラム諸国の関係が思わしくないとき、それでも親善をすすめるべきだというのか、エジプトの警察吹奏楽音楽隊(指揮官もいれて総勢八人)がイスラエルイスラム文化センターに招かれる。

 しかしイスラエルの空港で出迎えはなく、あやふやな英語を駆使した結果、まったくべつのちいさい町に着いてしまう。

 隊長はイラつき、当り散らすがすべもなく、たまたまお世話になった食堂のはねっかえり風出戻りのおばさん(おねえさん?)の配下、近所に泊まる。

 女の子とうまくやってる青年、そして引っ込み思案でデートのもうひとりの女の子とうまくやれない青年、それに付き添い、引っ込み思案の青年を手引きする。

 いっぽう女主人は隊長を踊りに誘い、夜の街を歩く。

 この隊長は男やもめで、息子が親の怒りにふれて自殺し、それを苦にして奥さんも早く亡くなってしまったという孤独者。

 近からず、遠からずのやりとりのあいだに、隊長はシンミリし、自分を振り返る。

 以前はイスラエル人もエジプト人も、おなじようなメロドラマをTVで観て涙を流していたのだということに気がつく。

 じつに静かなトーンでイスラエルイスラムのひとたちがどう理解しあえるかについて語っている。

 ラディカルなひとたちにとっては、甘っちょろいだけと評されるかもしれないが、くにとくにというだけでなく、ひととひととの結びつきについてあらためて考えさせてくれる。

 こんな地味な作品、ニホンで見るのはとてもタイヘンだろうと思ったら、すでに公開済み、第二十回トウキョウ映画祭等で賞を獲得。

 
(2009/06/11)