メキシコ映画「Tivoli(ティボリシアター)」(1975)





・「Tivoli(ティボリ・シアター)」Alberto Isaac、メキシコ(1975)

 メキシコの(都市の)近代化が画期的にすすんだ40年代、50年代、貧民街を取り壊し、おなじくティボリ・シアターを潰すことも画策された。

 このティボリ・シアターというのはレビュー(ボードビル系)劇場、わたしはいなか者なのでニホンでも浅草とかにあるその種の劇場には残念ながら縁がなく過ごしてしまったが、トップレスならぬストリップ劇場の趣もあれば、鋭い政治風刺のコメディもあるという雑多煮、娯楽のすくない当時においては、殿方にとっての貴重な娯楽施設であったと考えられる。

 お客は中年以上の中産階級あたりの男たち、一方、当時にはより洗練されたレビュー劇場もあったらしく、夫婦で観劇できるようなより客層が洗練された場所も存在したらしい。

 メキシコ市当局にとっては目の上のたんこぶ、このティボリシアターを姦策により取り壊しに導く。

 このシアターで働く、あるいは演じるひとたちの群像が描かれる。
 舞台シーンやら音楽シーンもふんだんに盛られ、さながら当時のポピュラー文化のカタログ。

 チャチャチャやらマンボ(ペレス・プラド自身が出演)、サロン・ロス・アンへレスでのマンボも出てくる(こんなわたしでも、むかしは何回か行ったものだ)。

 出演は名優ぞろい、色気にあふれた女たちがめずらしくないなかで、あの一時はセックス・シンボルと騒がれたリン・メイがもっとも誘惑的だった時代の姿も映し出され、監督の遊び心が満ち溢れている。

 このシアターの面々は、メキシコ市当局となんとか対抗したいと願うが、すべては押しまくられてしまう。

 この点、おなじくレビュー劇場を扱っているとはいいながら、イギリス映画「Mrs. Henderson presents(「ヘンダーソン夫人の贈り物」)」における抵抗とは対照的だといえる。

 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=138815446&owner_id=1299833

 艶っぽいシーンが多いので、もちろん成人指定。

 今晩、22チャンネルにて。



(2009/05/15)