米国映画「Milk」(2008)

・「Milk」Gus Van Sant、2008,米国

 米国社会内にてマイノリティがいかに社会的公認を得ていくか。
 まがりなりにも自由を標榜しているくにではあるから、闘いさえすれば勝ち取れないものはないというオプチミズムに裏打ちされていると思っていいのだろうか。

 ゲイであるということは、まったくプライバシーに属することであり、言挙げするには相応しくない。
 しかしながらもし抑圧をうけるならば、それに対抗するためにはプライバシーを乗り越え、組織化が不可欠になる。
 いわゆる組織化により、どんな事態が待ち受けるか、歴史がいくつも実証している。
 ここには二律背反があり、そのさきには迷路が待っているのだろうか。

 この作品でのハーヴェイ・ミルクの場合は、状況を乗り越えることができた稀有な例だと思える。
 プライバシー・レベルの暮らしをじゅうぶん大切にしながら民の声へと具現化していく。
 しかもマキャベリズムに堕さないように配慮しながら、権利を勝ち取っていく姿、もちろん(支持)集団あっての前進は米国の多様性(進歩性ではない)を実感させてくれる。

 しかしながらこの監督がしばしば描いてきているように、ヴァイオレンスに充ちた米国社会にて、つねに阻むものがありえるという結末。


 もしもうすこし別の方向を向いてもいいのならば、こんにち、ゲイ人口はかなりの数にのぼり、しかも経済的重要性は無視できないどころか、貢献度が際立ってきている。
 いつの時代にも保守層やら原理的カトリシズムというのは存在する。
 だがそんな客観的重要性あってこそ、この種の作品がメジャーとして押し出されてくるという事情があるのだろう。

 よくいわれているようにショーン・ペンが好演。


(2009/03/15)