米国映画「Under the volcano(「火山のもとで」)」1984

「Under the volcano(「火山のもとで」)」John Huston, 米国、1984

米国の映画監督John Hustonがその監督生命の最後から三番目として撮った映画として「火山のもとで」(Under the Volcano)という作品がある。
 ’84年の制作で、シティーの近く、永遠の春を誇るクエルナバカ市の、まあ、日本でいえばお盆のときが設定されている。

 この原作はMalolm Lowryによって書かれていて、知ってる人は知ってると思うけど、大江健三郎がぞっこん惚れてる作品で、関連文献も集めて読み耽ったとどこかに書いてあったはず。訳本も白水社からあったはずだけど、ずっとずっと品切れのまま、いまだかってゲンブツをみたことなし。
だから、英語のペーパーバックを西語の訳本と照らし合わせながら読まなければならなかった。

 舞台はその市のHotel Casino de la Selva(「密林カジノ・ホテル」)で展開される。そこでロケされたはずである。作者もそこに滞在していた。文化人がよく利用していたらしい。そこは高級というか、気持ちのよいホテルでシケイロスの壁画もあった。ところが、所有者が代わり、あまり手入れがされなくなっていた。評判も落ちた。

 噂を聞いて泊まりに行ったことがあった。おふくろと妹とで行ったのだけれど、木の床の油の匂い(椿油らしい)がどうにもならないといって、おふくろはそこをキャンセルしたくらい、手入れが悪かった。映画をみてから数年たっていたので、よく覚えていなかったけれども。往年の面影がやっぱりないようだった。

 そのホテルもとうとう取り壊しになるというニュースが出ていた。その土地一帯は米国系の大規模スーパーになるという。文化財であるのみならず環境の問題でもあるから、反対運動がいま湧き起こっているところ。でも、これで、ひとつの時代がおわってしまうようで、複雑だ。


              (2003/05/02)