メキシコ映画「El viaje de Teo(「テオの旅」)」(2008)

「El viaje de Teo(「テオの旅」)」Walter Doehner,メキシコ(2008)

 オアハカの九歳の少年テオは、村でまずしい楽隊を指揮する叔父といっしょに暮らしていた。
 幼いときに父親は消えてしまったが、じつは監獄に留まっていたらしく、突然、目の前にあらわれる。

 テオは父親に面食らうし、叔父もここでテオには何不自由ないとか説くが、父親は息子を国境の向こうに連れていくことに固執する。
 べつに目だったドラマがあるわけではなく、テオは言いなりについていく。

 国境付近にて父親はpollero(案内人)に話をつけ、多額をはらい、十人以上のひとたひと、米国への密入国をはかる。

 米国の国境で怖ろしいのは、米国のボーダーパトロールに、国境付近の住民右派による自警団。
 しかし、あまりマスコミにのることはすくないが、当のメキシコ人自身が盗賊化して密出国者を狙い、暴行し、金品を奪う。

 テオたちの一行もこの襲撃に会い、父と子は離れ離れになる。

 案内人の手下に、中学生くらいの甥っこのような肥満児がいて、このテオを不憫におもい、手助けをしてあげる。

 国境付近では不遇の者たちのあいだで、騙しあおうという空気もあれば、助け合いのつながりもあり、慈善施設もある。
 テオはひとのお世話になりながら、父の消息を調べ、ついには中学生くらいの子と密入国を企てるが、失敗におわる。
 しかし途上、案内人が襲撃人ともグルになっていることを知る。

 国境では、治安が乱れ、絡み合いが複雑であるのを、子ども心に知っていく。
 こんな具合に、大人の世界に身をはりながら衆知していくというのは、残酷である。

 ポスターではテオという子は可愛い子役にみえるが、作品上では疲れきることもあり、ただみすぼらしいだけにもみえる。
 子役のウケにたよった作品ではない。

 子どもなりに、大人の世界を垣間見るという構造か。

 やりきれなさが充満。


(2008/11/13)