フランス映画「L'Année dernière à Marienbad(「去年マリエンバートで」)、1961


「L'Année dernière à Marienbad(「去年マリエンバートで」)、アラン・レネ、1961、フランス・イタリア

 古典中の古典のひとつで、脚本はヌーボーロマンの旗手アラン・ロブ=グリエ

 はじめてみたのは何十年もまえのこと、もちろん、ちらりと覗いたくらいで理解できるシロモノではなく、ただ眠くなっただけだったような。

 いまでは、誤読を覚悟のうえでことなった観かたができるかと思う。
 もっとも、この作品をほぼ正確に読み取るような方法も存在しているらしいが、そこまで踏み込んでいくほどの余裕をいま持ち合わせていない。

 場所は閉じられた空間である宮殿で、登場するのは正装した男女、ゲームやら舞踏が取り交わされる。

 この設定というのは、ブニュエルの「皆殺しの天使」に似通っているようで、ヨーロッパ文明の自閉性を象徴しているようにも受け取れる。

 生産やら消費にはいっさいかまわずに、上部構造的、時間のおわりなく流れが扱われるが、ふたりの男女の中心人物にとっては、忘却やら記憶やら時間のみが、ここから別の世界への通路と化していて、それにより自己の特殊化をねらう。

 それは愛の記憶を取りもどすだけなのだろうか、その背後にはどんな世界がひろがっているのか、もちろん明かしはされない。

 ある程度までこの物語は解読可能であろうが、それでも謎は残され、それこそが、そのわからなさこそが魅力であり、けっしてわからないことをわかろうとしてわたしはこの作品を観たのではなかった。

 夕べ、11チャンネルにて。


(2008/11/03)