メキシコ映画「El jardín del edén 「エデンの園」」(1994)








・El jardín del edén (1994)「エデンの園
  Maria Novaro監督、メキシコ・カナダ・フランス合作

メキシコでもっとも傑出した女性の監督といわれるマリア・ノバロ。
 1991年に「Danzon」という、ほろ苦いラブ・コメディが成功してから、ずっとこの作品に没頭してきたという。

 昨夜、TVのカナル11で放映。
 見ておかなくてはならないと思っていたのだが。
 しばらく眺めていると、あっ、観たことあったっけ、とか思い出した。
 でも、そのときは疲れていたせいか、途中から寝てしまったはず(おなじくTVだったと思う)。
 今回は、しっかり観たつもり。

 メキシコと米国の国境沿い、サンディエゴと接するティフアナというところは、まずコワいところとわたしなどは思ってしまう。
 米国人の出入りがはげしく、お金が派手に行き交うし、いまでは、ドラッグ関係でトラブルがたえないところ。
 正直いってあまり行きたくないところ。

 しかし、ここは国境を不法に越えて米国に出稼ぎにいくメッカ。
 もっともそれまでは、川を越えるのがメジャーだったが、その後はアリゾナ砂漠などを歩いて渡ろうとし、溺死のかわりに脱水とか衰弱死が増えているのだとか。

 ひとりの主人公は、なんとしてでも米国に渡りたいというメキシコの若者。
 メキシコに惹かれる若い米国人女性がそこに関わりあう。
 メキシコ人を理解して、手助けをしたいと望むが、半ばコミカルな振る舞いに終始。
 ほかに、若いメキシコ人未亡人一家、その息子は亡き父親への複雑な感情に悩む。妹たちもアイデンティティに悩む。
 ほかに、チカノ・女性アーティストやら、さきの若い米国人女性の兄で、鯨の声にしか惹かれない男とか。
 米国内のメキシコ人のひなびたコミュニティも垣間見え、そういったコミュニティの結びつきの絆がどこにあるのかも考えさせる。

 この人物の組み合わせにより、国境の街で生じることが描かれる。
 それは経済とか労働とかの面もあれば、ふたつの文化がどのように分かり合えることができるのかという永遠の課題にも触れている。
 このモザイク性が作品に深い陰影を与えている。


http://cinemexicano.mty.itesm.mx/peliculas/jardineden.html

 
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 この作品のなかに、Juanito Soldadoという聖人像が出てくる。
 いったいどういう聖人なのか、シティのメキシコ人に訊いても知らない。
 調べてみたら、ティフアナを中心とした、メキシコ人密入国者の守護聖人であることがわかった。
 これがシティあたりならサン・フダに願をかけるところなのだが。

 英語版 http://en.wikipedia.org/wiki/Juan_Soldado

 密入国者にとって敵は米国のボーダーパトロールだけではない。
 手引き役として多額の料金をとって道案内をするポジェロ(pollero)もよく裏切るし、国境付近で密入国者を狙ったメキシコ人強盗団もいて、この映画の男性主人公も瀕死の重傷をおわせられる。

 展覧会を用意するチカノ・アーティストの作品には、フリーダ・カロ関係のものも含まれている。
 あのユウメイな「二人のフリーダ」をモデルをつかって再現もする。
 チカノ・アーティストにとっては、アイデンティティを確認するシンボルへの執着がつよいのだが、フリーダもそのキー・コンセプトといえる。

 DVDの二枚の写真では、ラブコメディの要素がなんだか強調されている様子。
 でも、ほんとはもっとシビアな内容。



                 (2007/10/27.28)