メキシコ映画"Luz silenciosa", 2007
・"Luz silenciosa", Carlos Reygadas, 2007, メキシコ、オランダ、フランス
メキシコの北部にメノニータスというグループが住んでいる地域がある。
かつてのドイツから移民してきたものだが、宗教的理由にもより孤立して暮らしている。
暮らしは牧畜、農業だから経済的には外部と関わりをもっているわけにしても、その宗教的規律は厳しく、しかも古ドイツ語を用いている。
世界的には、その種の国家内孤立エスニックグループは少なくない。
たとえばエリアス・カネッティの先祖のスペイン在住のユダヤ人は近代の始まりにスペインを追放されて東ヨーロッパに逃れた。
かれらだけの孤立グループに留まり、16世紀当時のスペイン語を保ちながら今日現在を、内的結びつきを確固としたものにしつつ、行き続けているという。
宗教的理由もあり、子だくさん。
その農場主のおとこが、よそのおんなに惚れてしまう。
これこそ苦しい恋を絵に描いたようなもの。
この農場主、奥さん、よそのおんなが、それぞれ深く苦しみ、悩む。
まるで初期のフランス心理主義のような展開かと思っていたのだが。
しかし堪えきれず、奥さんは悶死してしまう。
その弔いにおんなが訪れる。
それから。。。
この作品は今年のカンヌで批評家賞を獲得。
まだ30代のこの監督は、Japon, Batalla en el cielo、に次ぐこの三作目で、巨匠ぶりを発揮している。
テンポはゆっくりとしていて、さながらタルコフスキーの映画を思い出す。
近年、高まりをみせているメキシコ映画というのは、いろいろ趣向をこらし、ハリウッドに負けないような魅力を得るべく、出し惜しみをするところのない作品で勝負してきている。
そのなかでみると、ますますこの作品および監督の悠然としたところが際立つ。
ストーリー的には単調だが、そこへ観る者がのめりこんでいけるかどうか。
(2007/10/14)