メキシコ映画「La Guerrilla y la esperanza:Lucio Cabañas」(2005)

・「La Guerrilla y la esperanza:Lucio Cabañas」、Gerardo Tort, メキシコ(2005)

 ドキュメンタリー映画
 アカプルコをふくむゲレーロ州は、メキシコでもっとも貧しい地域のひとつ。
 小学の教師からはじめて、貧しいひとびとの側にたち、ついには武器を握り蜂起し、山中ゲリラを組織したルシオカバーニャスは、いまでも伝説的な人物。

 ゲリラ仲間は教職者、農民などから成り立つが、せいぜいが三百人程度。
 資金源は、誘拐やら銀行強盗、いわば義賊である。
 のちに州知事にもなる悪名たかきルベン・フィゲロアも誘拐する。

 やがて国家も硬化し、それこそ大軍を送り、鎮圧・殲滅にはかる。
 ときは第三世界外交のリーダーとして面目躍如のエチェベリア大統領。
 結果としてあえなく壊滅。

 しかしひとびとは、ルシオに希望をよせていた。
 まるで救世主のように。
 いまでもどこかに潜伏しているのではないかと。

 この映画は多くの関係者の証言で成り立っている。

 ルシオは、サパータを理想とし、マルクス主義には通じていなかった。
 キリスト教的社会正義といったところが骨子。
 だから、ゲレーロ州の政治に社会正義が導入されれば、銃を捨てる気持ちでさえいたらしい。
 しかし内部でもイデオロギー闘争が存在したし、政府も過剰反応をもって接した。

 60年代、70年代はメキシコの各地で、あるいはラテンアメリカ中で、ゲリラ闘争が勃発していた。
 その根はどんなところにあったのか、ひとつの例としてこの作品はいろいろなことを教えてくれる。

 ある元仲間が話していたこと。
 ルシオは、さびしそうな眼をしていた。

 これは、ゲリラのタイプ研究に大きく貢献しそう。
 あの、ゲバラの毅然とした、憑かれたよな眼。
 スブ・マルコスの仮面としての眼、しかし饒舌な眼。
 それにルシオの哀しそうな、耐えていくことを命じられたような眼。


(2008/05/29)