イラン映画「Niwemang(「Half Moon」)」2006

・「Niwemang(「Half Moon」)」Bahman Ghobadi、イラン・イラクオーストリア・フランス、2006

 「亀も空を飛ぶ」の監督。
 クルド人の著名な民俗音楽奏者が最期のコンサートを催すために、各地に散らばる十人もの息子たちをおんぼろバスで集めて、トルコ領クルド人地区を目指す。

 マモとよばれる父は、自分の最期が近づくのを感じながらイラン、イラク領をまわる。

 風景はごつごつとして、荒々しく、また殺伐とし、その旅のつらさを感じさせる。

 もちろんどこを訪れても、名声は響いているものの、民族的に束縛される。

 しかも、女性歌手を得てみても、公衆のまえでの女性の歌唱は禁止されているがゆえに、隠しとおせなく、検問にて連れ去られる。
 はては、せっかくの楽器まで痛手をおう。

 息子たちは士気がおとろえるが、マモはいかなる困難が行く手にあろうとも毅然とした態度をみせる。
 ついには、雪上を逃げ惑いながらマモは命をおとし、しかし、遺志をつぐようなかたちで、コンサートはひらかれる。

 観終わって、どんな気持ちになればいいのか、しばらく考えた。
 落ち込んでいればいいのか、その物悲しさに。
 あるいは、それでもクルディスタンの音楽、伝えられる音楽の生にうたれるべきなのか。
 なにかを感じるのに考え込まなければならないというのも、おかしな話であるが、意味の捕まえ方であれこれ考えた。



 テオ・アンゲロブロスの「旅芸人の記録」を思い起こさせる。といっても、岩波ホールで観たのは、はるかな昔のことのようにおもえるが。
 あのギリシャ人たちの音楽も物悲しかったと思う。

 そこへくると、クストリッツアのノースモーキングオーケストラの開けっぴろげさは何なんだろうか。


 この、いまでは知るひとぞ知るの大監督のサイトはここ。

 http://www.mijfilm.com/movie.php?m=71&lang=1

 
(2008/05/25)