フランス映画「Betty Fisher et autres histoires(「ベティ・フィッシャーとその他の話」)」2001

・「Betty Fisher et autres histoires(「ベティ・フィッシャーとその他の話」)」、Claude Miller、フランス、2001

 ルース・ランデルの原作に基づくこの作品、ニホンでは公開されていないらしい。

 過去に複雑な過去をもつ母親と娘、この娘も幼い子どもをもち、著作があたり、かなりのんびりと、しかしぴりぴりと(矛盾しているが)暮らしている。
 そこに病院の検査のために、母親が滞在するが、そのあいだに、子どもが家で事故死してしまう。
 この事故死をきっかけに、この母娘の過去が執拗に描かれているのかと思っていると、あてがすっぽりはずれる。

 かつての母親は、亡くなった子どもに似た子どもをさらってくるのである。
 娘は母親をなじるが、しばらくは預かっていなくてはならない、ほとぼりがさめるまで。

 子どもをさらわれた女は、時の人になるが、いくらか身持ちがよくない。
 子どもは白人であるが、この女はいまはアフリカ黒人と住んでいて、このアフリカ人は子どもによくしている。
 しかしこの女の奔放さに、このアフリカ人はしだいに葛藤がたかまってくる。
 この女のまわりには、リスキー・ビジネス系の男たちがつらなっている。
 このへんで、原作者のルース・ランデルのスリラー劇さが縦横無尽に展開される。
 さらには、意外性もくわわった悲劇的な大団円。

 主人公である女の著作家は、さらわれた子どもをなんとか返さなくてはと思っていたが、しだいに情がうつり、虐待された痕もあるので、なんとかいっしょにいようとして、国外に出る。

 ほろ苦い。
 主人公である女の軌跡がわりとよく描かれているが、上手に、あまりに機知をきかせた作品構成なので、あんまり上手に創り上げると本来のテーマがかすんでしまうこともあるのではないか、などと贅沢な感想ももった。

 二人以上のアフリカ黒人が現れ、節度と敬意をもって描かれていたのに、おおいに感心する。
 フランス映画にて、アフリカ人に思いやりのあるまなざしをむけるものはそれほど多くなようにみえるが、じつはマイナーな価値観をもつ映画人はかなり好意的なのかもしれない。


(2008/05/16)