メキシコ映画「Quemar las naves(「船を燃やす」「背水の陣」)」2007


 ・「Quemar las naves(「船を燃やす」「背水の陣」)」、Francisco Franco,メキシコ、2007

 いなか町であるがコロニアル調で美しいサカテカス市
 いなか町ではどこでもおなじように保守的で息がつまるが、とりわけ青少年にとってはつらく、どこかへの脱出願望が増長される。

 エレーナとセバスチアンの姉弟は、病弱な母親の看護にいそしみ、とくにエレーナはほとんど屋敷から一歩も出られないような状態をすごす。
 エレーナにとっては、母親の看護とともに、セバスチアンを気遣うが、ほとんどインセストにまで似通っている。

 中性的魅力をただよわせるセバスチアンは、転校生の反逆的な青年に惹かれ、出会いと別れを味わう。
 しかしセバスチアンが、より幅広く同性愛に惹かれているのを知ってエレーナはなじる。

 エレーナはそのまま、その屋敷に居残るつもりなのに、セバスチアンは脱出願望を抱き、しかし、実行するまでの踏ん切りはつかない。

 そんなエレーナもついには、こころの変化にいたる。
 屋敷を売却して、セバスチアンに自由をあたえる。

 Quemar la naveは、エルナン・コルテスの故事にちなんで、ふつうは背水の陣、とか訳されるのがふつうであるが、ここでは、若者が自由を得ることをさしているらしい。

 このふたりの姉弟のこころの葛藤がメインテーマ。

 若者の脱出願望など、いまのニホンでは古めいているかもしれないが、若者たちがそのとき、そのとき、いかなる選択を強いられていったか、ニホンの観客にも共感をよびそうにおもえる。

 フリエッタ・ヴェネガス等の歌もあり、ニホンでの公開が望まれると思う。
 


(2008/04/26)