ドイツ映画「Halbe Treppe(Grill Point)(「階段の途中で」)」2002
・「Halbe Treppe(Grill Point)(「階段の途中で」)」、アンドレアス・ドレーゼン、ドイツ、2002年
40代前後の二組の仲のよいドイツの夫婦。
ラジオ番組ではたらく夫クリスと料金所で働く二度目の妻カトリン。
公園で軽食喫茶をいとなむ夫ウーヴェと香水販売売り場のエレン。
ともに問題をかかえ、いがみ合いながら日々をすごす。
しかしそのすごし方にこそ人生の表裏がにじみ出ているようで、言い合いをしている風景にたいしても観る者はリラックスしてしまいそう。
いまの社会のだれもがこうなのだ。
ところが突如、クリスとエレンが恋仲におちいる。
しまいにはカトリンの目の前で情事が発覚する。
ここからが修羅場である。
とはいうものの、じつはよくある話でもある。
四人のなかでいちばん愛想のよくないのは、ウーヴェ。
公園の階段の途中の仮設にちかいような軽食喫茶で渋々働く。
階段わきでバグパイプ吹きがひとりでメロディをかなでていると悪態をつく。
四人はそれぞれ自分の生に向き合う。
やはりクリスとエレンは離れられないと感じる一方で、カトリンは狂気さながら。
ひとりウーヴェは蚊帳の外で、なんとか采配をふるおうとし、この二組のカップルはその後、会わないことにするとか決めようとする。
クリスとエレンは、あたらしい住まいを探すために出歩く。
カトリンとウーヴェも近づいたようにみえたときもあったが。
だがクリスとエレンは新居さがしの途中で、おたがいにずれがあるのに気がつく。
ずっといっしょにいられそうもない。
クリスはカトリンを探しにいく。
エレンもひとまず家にもどるが、もはやウーヴェにはたえきれず、ふたりの子どもをつれて新しい住まいを探し始める。
階段の音楽師は二人、三人とふえていき、ウーヴェがあらためて、うらぶれた気持ちにおちいってみると、それはほとんどジプシーの楽隊の
ようだった。
うさんくさく思っていたウーヴェもすべて踏ん切りがついたようで、楽隊を軽食喫茶のなかに招いて饗宴をもよおす。
四人が四人とも必死の選択を選び出し、再生への道を歩みだす。
修羅場もあるものの、この女性監督は距離感をおいたような、どこか突き放した感じがただよい、社会の叙情的なレントゲン図にもなっている。
そう、人生、ひとつ先にはなにがあるかわからないのだ、だから生きることは愉しい。
夕べ、22チャンネルで観た。
2003年の大阪ヨーロッパ映画祭で上映。
http://www.oeff.jp/25_Halbe-Treppe.html
夫婦とは、大人のおとことおんなとは、ということを考えたいひとにはうってつけの佳作。
ドイツ人にこれほど親密感を抱いたのははじめてぐらいかもしれない。
(2008/04/07)