フランス映画「L'Homme de sa vie 」(2006)



・「L'Homme de sa vie (人生の男)」、Zabou Breitman、2006.フランス

 フランスのいなかのヴァカンス。
 いかにもゆっくり時が流れ、ひっそりと生が息づく。
 なんという心地のよさだろうか。

 しかし、全体にややしっくりしない空気があるのにも気がつく。
 主人公の男の人間関係、つまり夫婦関係もふくんでのことであるが、どこか溶け込めないものを抱えているようで、その故にか、よりストイックな生き方が表に出されてくるようである。

 そこにひとりのおとこが近所に移り住んでくるということで、すべての流れがかわる、あるいは顕在化する。
 主人公の男も、自分のことにみるみるうちに目覚めてくる。
 まるですべてはあらかじめ仕組まれていたかのように。

 監督は、女優出のかなりインテリ派であるようで、ゆっくりゆっくり、もどかしいまでに映像であそぶ。
 まるで出会ったふたりのおとこをもてあそぶかのように。

 ドラマチックな展開にいたってもおかしくないような話なのに、この抑制さはどうだろう。
 ただフランス物だから、などということばで片付けてはいけないのかもしれない。
 この、なにも起こらないようにみえる映画は、大人の映画であり、人生を味わえるひとだけの物語のように思える。



              (2008/03/27)