米国映画「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」(2001)



・「HEDWIG AND THE ANGRY INCH」、John Cameron Mitchell、2001、米国

 Cinematografo del Chopo(チョッポ・映画センター)では、このところ「セクシュアリティ」特集をつづける。

 今日の作品、なにも知らずに観たら、いわゆるゴキゲン系の、ロック・オペラであった。

 もともとオフ・ブロードウエイの、知る人ぞ知る、というよりも鳴り物入りの作品であったらしく、調べて知ったが、ニホンではすでに公開済みの映画であり、なんとこのニホン版ロック・ミュージカルまで公演されていたとは。
 嗚呼、我輩は徹底的に無知であり、このさい、鞭に打たれるべきか?

 いわゆる性転換の話であり、映画「トランスアメリカ」に似通っている。しかし、はるかにぶっちぎれている!

 冷戦下の東ドイツの少年は米国ポップスに首っ丈。
 ちょうどニホンの少年がそのころ、FENを聴きふけっていたように、占領米軍のラジオ放送に心酔。
 おなじく米軍軍人(黒人)を慕い、性転換までして米国にわたるが、夢は破れるのみ。
 はてはロックシンガーをめざし、アウトビオグラフィカルな唄(パンクやらグラム系)で突っ走る。
 そんな折、ベルリンの壁の崩壊が、心理的インパクトをあたえる。
 なぜひとは愛をもとめるのか、なぜひとは交わりたがるのかを切々と唄う。
 若い男の子とのいきさつもあり(観ているときは、そのへんのストーリーには追いつけていけず、音楽に酔っていた)。

 しかし、いくら落ちぶれてもアグレッシブさをうしなわず、突き進む。

 この主演もしている監督(もちろん舞台から)、「ショートバス」というNYの(物哀しい)セックス事情を扱った映画も製作したのだという(以前にレビューを綴った)。

 ところで月初めということで、このセンターの映画情報はあまり行き渡っていないようで、観客はわずかにわたし一人であった、と思ったら、もうひとり来て、ふたりであった。
 でも、ノリノリであったことは言うまでもない!



(2008/03/02)