インド映画『モンスーン・ウエディング』(2001)

・『モンスーン・ウエディング(Monsoon Wedding)』、ミラ・ナイール、2001、インド

 インドのすごく裕福でもない家庭での結婚騒動が、さながらモザイクのごとく、絡み合うように描かれる。
 インドでの結婚というと、伝統的に親の決めた相手と結びつけられるというのが、おとこにもおんなにも共通であるらしい。
 インド人が海外に移り住んだ場合でも、一族の結束はかたく、巧妙に相手が選ばれる。

 この映画の場合は、新郎は米国に住むPCエンジニアであり、新婦は当然、米国に移り住むことになっているらしい。
 しかし、この新婦、じつは仕事先でのフリンにこころを奪われていて、じつはこころは結婚へと向かってはいない。
 しかも、周囲が盛り上がっていくにつれて、当事者はより冷め、自分のこころの居所について悩む。
 もちろん近代人のメンタリティとしては、覚悟されるべきこと。

 こうして集まってくる一族のあいだでも、いろいろな問題が湧き上がってきて、インドの現代人間関係のあいだが、単純なインド人というステレオパターンでは把握できないことを示している。

 居たたまれなくなった新婦は、自分のフリンのことを新郎に打ち明ける。
 俗に、初夜での告白ごっこ、なるものは世界のどこでも厳禁のはず。
 それにもかかわらず、破談覚悟での告白。
 当惑はもちろん経るが、新郎は鷹揚に事態を理解し、ゆるす。
 かくして、さまざまな矛盾やらトラブルを内包しながらも、結婚式は盛大にとりおこなわれる。

 添うようなストーリーのひとつとして、結婚式エベントプロモーターの男が、新婦の家の若い使用人の女性に恋いし、ついには結ばれるというエピソードがあり、社会各層での結婚をめぐっての図式が示される。

 社会派であるとみなされているこの有能な女性監督の作品は、それでもインドの音楽やら舞踊にみちている。
 インドポップス風なアレンジが気のきいている音楽が目立った。

 ベルリン映画祭にて金獅子賞獲得。
 いちど、DVDを買ったのだけど、消失し、22チャンネルにて観る。
 

(2008/02/12)