米国映画「父親たちの星条旗」(2006)
・「父親たちの星条旗」、クリント・イーストウッド、米国、2006
物量の点で圧倒的優勢を誇ったはずの米国。
その米国軍にしても厭戦気分が醸し出されていたというのは、意外でもある。
あの、硫黄島での戦いにおいて、これほどまでの悲惨な戦いが繰り広げられていたというのも、わたしにとっては意外な事実に属する。
この戦いの裏で、米国側になにが起きていたのか。
あの星条旗を掲げる米軍兵士にはどんなストーリーがつきまとっていたのか。
かくしてスポットライトを浴びたあとの生はどのような色彩を帯びてしまうのか。
その米軍兵士の苦悩のなかでも、アメリカインディアンの血をひく男のはなしが、かつての、そしていまの米国をえぐりだしているかのようだ。
イーストウッドは、戦争にしても人生にしても、どちらが正義でぢちらが悪だ、ということはないと述べている。
なんと成熟した考えだろう。
いままでの戦争映画へのアンチテーゼともいえる。
それにしても、硫黄島の段階で、米国は140億ドルの国債を売らなければ勝てない、などと考えていたとは。
ニホンに比して米国の国力はすさまじい違いをもっているはずであるが、それでも国内の厭戦ムードのまえでは、弱気にならざるをえなかったとは。
ということは、あるいは、歴史のなかの「IF」として、交渉次第では、日米間にて和平休戦というのもありえたのだろうか。
(2008/01/12)