邦画「釣りバカ日誌18 ハマちゃんスーさん瀬戸の約束」(2007)
・「釣りバカ日誌18 ハマちゃんスーさん瀬戸の約束」朝原雄三、2007、日本
往きの飛行機にて見る。
このシリーズ、とくに好きだというわけではないが、何本か見ている。
いわば、会社社会のアイロニーのような受け止め方、主人公たるふたりの人物のコントラストに焦点があてられている。
おなじく釣り好きの万年ヒラ社員と、その社の社長たるべき人物の交友は、世を忍ぶものとなっているが、この社は建築会社、いわゆるゼネコン系。
この構成は、じつは大きな矛盾をはらんでいる。
釣りに興じるならば、もちろん豊かな、きれいな海、環境が必要。
しかし、ゼネコンは、都市部での大規模建築だけを手がけるものではない。
地方の開発・発展をめざしてのリゾート基地にも手を伸ばす。
地元の業者と組んで、地方のディレンマ(発展か自然保護か)にビミョウに分け入って、資本投下に努める。
そのひとつのケースに、釣りバカ二人組が巻き込まれる。
現地では開発を強行しようとする地元業者らと、自然保護を旨とする地元漁民らが対立し、まさに自然保護が力によって押し潰されようとしているときに、釣りバカコンビは地元の側に立つ。
ハマちゃんは、アジテーターとしての役割をつとめるが、現場には本社からもひとが来ているので、ハマちゃんは、ボブマーレー風の恰好で色めがねといった姿。
やはりいまでもレゲエはカウンターカルチャーのシンボルなのか。
この事業、じつは地元の黒幕がからんでいて、けっきょく、戦後復興の頃、ともに稼ぎまくり、よく知り合っていたスーちゃんがその黒幕に掛け合い、あっけなく建設計画はキャンセルされる。
途中、自然保護派のピケを業者たちが力ずくで排除しようとする、テンションの高い部分もあり、劇性を帯びている。
べつにとりわけ大胆ということでもなく、いまのニホンでは、このような対立はよく目にするもので、開発のボイコットもめずらしくない。
すごい作品ということではない。
しかしながら、ゼネコンの社長(および社員)が、建設と環境保護の板ばさみになるという点で、このシリーズが本来、抱えもっている矛盾が噴き出したという印象をわたしは持った。
もちろん企業側にすれば、かなりの準備と予算をかけてきたわけだから、こうすんなりと計画がキャンセルした場合の損失というのは、ばかにならないにちがいない。
こういった今のような社会で生き残りをはかるためには、命取りにもなりかねない失策とみなされてもいい。
ということで、意外と考えさせられる内容であった。
もちろん、人情模様といったものも描きこまれている。
(2008/01/09)