中国映画 “Luxury Car”(2006)


・ “Luxury Car”、Chao Wang(王超)、2006、中国・フランス

 疲れて頬もこけて疲れた男が上海にたどり着く。
 都会にて蒸発した息子を捜すために。
 娘に案内されて取りあえずの宿に居つく。

 停年を迎える刑事とともにあちこち探し回る。
 娘は忙しく働くが、じつはナイトクラブの売れっ子でもあった。
 上海は魔界とも昔からいわれるが、その歓楽さも今では極まったものになっているらしい。

 男、つまり父親は師範大学を出たものの、文革にて下放される。
 ところがいまでは地方の教育に熱意を感じて、停年過ぎても小学に勤める。
 四十年の地方暮らし、あらゆる苦しみを知りぬいた男の顔。
 顔には無表情のみがたえず貼り付いているだけ。

 娘のパトロンはひとが良さそう。
 しかし実は、息子はこのパトロンとのリスキービジネスにて、死亡していたことがわかる。
 以後、上海のどろどろとした世界が垣間見えてくる。

 娘はとうとう上海を離れることを決意する。
 母親は癌で亡くなる。それこそが息子との再会との切実な理由であったのだが。

 かくして父娘はいなか暮らしに落ち着く。

 一見、メロドラマ風。この手のメロドラマは、グローバル化した世界の都市周辺部ならどこでも見当たる。たとえば娘の暮らしは、コロンビア映画の「ロサリオの鋏」を思い出させたし。

 都市と地方のコントラストはいつでも、どこでも描かれている。
 ここでは、文革の犠牲者の世代と、躍進世代のあいだの乖離に注目すればいいのかもしれない。

 この映画、2006年のカンヌに出展。
 ある視点部門にてグランプリ受賞。おなじ部門にてじつは、あのメキシコ映画「バイオリン」も出されていたが、男優賞に終わった。ちょっとフクザツな感じ。


(2007/08/12)