フランス映画「Gregoire Moulin contre l'humanite」(2001)

 ・「Gregoire Moulin contre l'humanite(「グレゴアル・ムーラン対人類」)」 Artus de Penguern、フランス(2001)


 主人公たるグレゴアルは、不遇な生まれ。神経症気味なこの男の幼時がまずおもしろおかしく語られる。

 グレゴアルは、中年になりかけてパリのある会社に勤めだす。近くのバレー女教師に惚れる。なんとか近づきになりたいと思い、あるレストランですきを見て手帖を抜き取り、それを口実に親しくなりたいと願う。

 連絡は取れて、ちょっと会社から外出した際にオフィスは閉まり、それからグレゴアルの夜の遍歴は始まる。入り組み、悪いほうへ悪いほうへと先に進み、パリの意外な事実が明るみに出されてくる。
 ひとびとは、この日のパリチームとブルトン地方チームとのサッカーの試合に沸き立っている。それにひとびとも、グレゴアルも振り回される。フランスでのサッカーへの狂熱が描かれていて、ここでもフランスの意外な一面を知る。
 この悪夢的遍歴は、どこか覚えがあるような。そう、スコセッシの「アフター・アワーズ」のブラックユーモアにどっぷり浸かったドタバタにそっくり。

 バレー教師は、ちょうどボバリー夫人を読みふけっているところで劇中劇としても現れてくる。

 グレゴアルがバレー教師のために奔走するのは、ちょうどドンキホーテのような、思い姫的なコンテキスト。その教師は客観的に見れば、コミック名役回りでもあるから。そのプロセスにてグレゴアルの立ち回りはちょうど、ピカレスク調。しっかりとした構成になっている。バレー教師、というのもアルモドバルを意識しているのかも。

 監督兼主役は、アメリーにも出ていたひと。
 すごくオモシロい作品だと思うが、残念ながらニホンでは公開されなかったらしい。


                      (2007/04/22)