チリ映画「Paraiso B(「Bパラダイス」)、2002

”Paraiso B”、NICOLÁS ACUÑA、2002、チリ

チリといえばコスタリカと並んでラテンアメリカでも、生活水準が高い国として知られている。しかしスラム、低所得層が渦巻いている地域もある。ガルシア=マルケスが著した「戒厳令下チリ潜入記」などでもスラム地帯がピノチェット政権に対する抵抗を示していたとか語られていたはず。

 チリの下層民社会の話。すると、メキシコと著しく似通っているのに気づく。なんだい、どの国かなんてあんまりモンダイじゃない。わざわざチリ映画なんて見ることなかったのか、なんて気にはじめは陥ったが。

 競馬の闇ギャンブルの世界。闇で怪しい金の取引が交わされる。徴収人の若い男は、小ボスの妹とかつては恋仲であったが、かのじょはマイアミに逃避。しかし、家族トラブルのようなもので帰国。若い男とヨリが戻る。
 一方で小ボスは使い込みがばれ、半殺しの目にあい、妹を大ボスに提供することに。そこで若い男は立ち上がる。まあ、そんなふうな、いわばごくありふれたストーリー。

 いまのチリのロック系のいきのいい音楽のほかに、示された社会の活写が魅力的といえば魅力的。わりとつまらないなあ、なんて思いながらも、いやあ、こんなところにハマりこんだら、そりゃ、たいへんだよなあ、なんてけっこう感情移入して見てたかもしれない。
 でもじっさいには、もっともっと暗くておぞましい世界がそのへんにはよどんでいるんだろうな。


(2006/11/27)