サラエボ映画「Grbavica(「グラバビツァ」)」(2005)

「Grbavica(「グラバビツァ」)」、Jasmila Zbanic、(2005)、サラエボ

 あのサラエボ。話はどこからでも始められる。女のこ12歳の修学旅行の費用の捻出。
 シングルマザーの母親は、なんとしても行かせてやりたく、洋裁のほかに夜、バーのアルバイトも始める。
 戦いの跡は街のいたるところに垣間見える。しかし普通の暮らしも営まれているようだ。とくに思春期のこどもたちは、青春の始まりを予感する。

 娘は父親が戦死したと思い込まされてきた。戦死ならば修学旅行の費用は無料で、戦傷者なら割引される。その証明書さえあれば、修学旅行の実現など少しも悩む必要がない。ここから母娘の葛藤がはじまる。
 母親がバーにて男のひとと関わっていくことが娘には許せない。あのサラエボでもいまでは、歓楽街も出来、派手な光景がちらつく。

 土壇場。父親の正体を知りたくて激昂する娘についに母は明かさざるをえなくなる。
 母は捕虜収容所にてレイプされ、子を孕んだのであった。
 ある種の和解が生じ、髪を刈りきった娘は母に見送られてバスで修学旅行に出る。

 以下、31歳のこの女性監督のコメント:
ボスニア戦争は13年前に終結したが、ボスニア女性2万人に対する強姦、12万人の殺戮、数百万の難民を生み出した張本人である大物戦争犯罪人はいまだ捕まっていない。私は、セックスを戦争戦略に使用したボスニア戦争を体験した。それ以来、強姦とその結末は、常に私の関心事であった」

 先の「グアンタナモへの道」は先のベルリン映画祭にて銀熊賞、このサラエボ映画は金熊賞であった。


                   (2006/11/19)